森を楽しみ、森を学ぼう フォレストアドベンチャー・添田が開業

木々の間を縫うように126メートルの距離を滑降

記事 INDEX

  • 木の上で”大冒険”
  • 癖になる?爽快感
  • 守り残したいもの

 霊峰・英彦山の麓に位置する福岡県添田町に4月29日、森の中でアスレチックを楽しむ自然共生型アウトドアパーク「フォレストアドベンチャー・添田」がオープンした。2017年の九州北部豪雨で被災したJR日田彦山線の旧駅舎や線路跡も利用した施設で、地域のにぎわい再生に向けた起爆剤としても期待されている。

木の上で”大冒険”


施設は「道の駅 歓遊舎ひこさん」に隣接している

 施設は「道の駅 歓遊舎ひこさん」の背後に広がる2.4ヘクタールの森林をいかして整備された。丈夫な杉の木に設けられた地上2~15メートルの足場から、板の上を歩いて別の木に渡ったり、ケーブルを頼りに地面に滑り降りたりできる。


ゆっくり、ゆっくり、命綱を頼りに木の間を渡る

 フォレストアドベンチャーは、フランスで誕生した冒険施設。元々は、企業研修などで自己管理や危機回避の能力を養う”教材”として開発された。


大人から子どもまで夢中になれるアトラクションがそろう

 研修目的で生まれたとはいえ、この特別な体験がおもしろくないはずはない――。大人から子どもまで楽しめる施設として急速に広がった。日本にも上陸し、福岡県内では糸島市と久山町に整備されている。


気分はまるで空中散歩

 コースは2種類。スリリングで難度が高めのアドベンチャーコースと、家族向けのキャノピーコースがあり、それぞれ1時間30分ほどで体験する設定になっている。


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癖になる?爽快感

 高い所は苦手なのだが、支配人の猪頭(いがしら)修平さん(46)のアドバイスを受けながら、施設の開業前にチャレンジさせてもらった。

 はじめに映像で安全講習を受け、命綱となる安全器具・ハーネスを装着する。


旧駅舎を利用した管理棟でハーネスを着用する


 その後、6年前の豪雨で被災したJR日田彦山線の線路跡を100メートルほど歩いて森に向かう。「線路を歩く」という非日常の体験。映画『スタンド・バイ・ミー』のワンシーンを思い出した。


 斜面をのぼると視界が開け、パーク全体を見渡せた。杉の木をつなぐように設けられた”回廊”や階段がある風景を見上げると、まるで森の中に築かれた空間都市のように見え、心が浮き立つ。


まるで森の中の空間都市!?

 まずは練習コースで器具の使い方などを習い、実践してみる。慣れない器具に最初は苦戦したが、コツが分かるとスムーズに進めるようになってきた。

 「自分の安全は自分で守る」がフォレストアドベンチャーの原則。練習コースの先は、ハーネスが頼りの”一人旅”だ。


1トンの重さにも耐えるという命綱が頼りだ

 杉の木に設けられた階段をのぼり、樹上に到着。目の前には、宙に浮く吊(つ)り橋のように木の板が連なっている。前にある板に足を置くたびに、体がゆらゆらと揺れる。地面までは5メートルほど。転落防止の器具で守られていると分かってはいても、足はすくみ、ロープを握る手に汗がにじむ。まさに”空中散歩”の大冒険だ。


不安定な足元に、思わず体がのけぞる


 施設の目玉は、ロープを頼りに126メートルを滑り降りるジップスライドだ。高い場所に少しずつ慣れ、スリルを心地よく感じる余裕が出てきたとはいっても、高さ15メートルほどの足場から空中へ飛び出すとなると、かなりの勇気が求められる。


立木に設けられた足場から飛び出す

 テレビのバラエティー番組で目にする状況。芸能人が躊躇(ちゅうちょ)する様子を画面で見て笑っていたものの、いざここに立つと本当に動けない。

 いろんなことが頭の中を巡る。「あまり人を待たせるのも申し訳ない。重さ1トンにも耐える命綱と聞いた。きっと大丈夫」。飛び降りる覚悟で、「えいっ!」――。


気分はターザン

 意を決して飛び出すと、怖いという感情はすぐに消えた。冷や汗でぬれた体に受ける風が、思いのほか心地よい。これは癖になる爽快感かも――。木々の緑が視界を流れていき、あっという間にゴール。クッション代わりの木くずの上に体を預けた。

守り残したいもの

 施設の管理棟は、豪雨被害で不通となった日田彦山線の「歓遊舎ひこさん駅」の旧駅舎を改修したものだ。「今あるものをいかにうまく活用できるか」も施設のテーマ。屋根や柱などをそのままいかし、木が香る真新しい事務所へと生まれ変わった。


木材をふんだんに使い、旧駅舎を改修した管理棟

 地域の公共交通が鉄道からBRT(バス高速輸送システム)に切り替わるため不要になったレールは、撤去される直前に町に頼んで残してもらった。


レールや枕木も森へ続く歩道として活用した

 「地元の人にとって6年前の豪雨は忘れられない大きな出来事。ここに線路がありましたよ、そう記憶を伝えていくためにも、豪雨災害の象徴的な存在であるレールは残しておきたかった」と猪頭さんは話す。

 「もう一つ、残したいものがあるんです」と連れて行ってくれたのは、施設の上方にある湿地帯だった。


森の中の湿地帯。カスミサンショウウオも確認されたという


 人の手が加えられていない、大きな水たまりのような場所に目を凝らすと、オタマジャクシやアメンボが静かに動いていた。「絶滅が危惧されているカスミサンショウウオの生育も確認されたんですよ」


水たまりにはオタマジャクシやアメンボの姿が


 猪頭さんは「ここをビオトープにするつもりです。森を楽しむだけではなく、学ぶ場にもしたいと考えています」と笑顔を見せた。


「森を楽しむだけではなく、学ぶ場にもしたい」と猪頭さん

 施設利用の予約・問い合わせは、フォレストアドベンチャー・添田(080-3975-4010)へ。予約優先だが、空いていれば飛び入りで参加できる。


杉の木立の合間から日の光が差し込む



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