鉄の街・北九州名物で鋼のように硬いと言われる菓子「くろがね堅(かた)パン」と、人気漫画「北斗の拳」がコラボした缶入りの非常食が誕生した。その名も「世紀末保存食 北斗の堅(けん)」。登場人物の名ゼリフをもじったパッケージもユニークで、漫画のイメージに合ったハードな非常食として注目を集めている。
ハードな非常食
開発したのは、食品用の缶やスプレー缶のほか、非常食の製造販売を手がける光工業(広島県)。大規模災害が相次ぐ中、非常食の備蓄に関心を持ってもらえる商品を企画し、着目したのが、吉田龍一社長や社員がファンだという北斗の拳だった。「世紀末の荒廃した世界を舞台にした漫画だからこそ、非常食も関連グッズになり得るのでは」と思いついた。
昨年7月頃、北斗の拳の作者で漫画家の原哲夫さんらが設立した漫画出版社「コアミックス」(東京)に協力を打診。同社は「ファンはグッズを鑑賞用として開けずに保管することが多い。その心理を防災用品に利用するのは面白い」と快諾したという。
わが備えに一片の悔いなし!!
両社が中身に選んだのが、大正末期に官営八幡製鉄所の従業員の栄養補給食として生まれた「くろがね堅パン」。現在の九州製鉄所八幡地区で製造されたブリキを光工業が缶の素材に使っている縁に加え、長期保存できるよう水分を極力少なくした「ハードな硬さ」が、漫画の世界観に合うとの意見で一致した。北九州市の製造会社「スピナ」の浜口勝克・堅パン課長は「北斗の拳とコラボすることで全国に知ってもらえる」と期待を寄せる。
缶は高さ約12センチ、直径約10センチで、堅パン5枚入りの袋が四つ入っている。缶には主人公のケンシロウが「堅(かた)ぁ!!堅(かた)あたたたたーっ!!」と叫ぶ姿を描き、袋にはラオウの名ゼリフをアレンジした「わが備えに一片の悔いなし!!」などのメッセージを記した。
ココア味で、缶が未開封なら5年間保存できる。4袋入りの缶と、缶に入っていない4袋のセット(堅パンは計40枚、税込み3400円)などで販売。7月9日までクラウドファンディングで製造費の支援を募り、購入の申し込みも受け付けている。9月からの一般販売も計画中だ。
原さんは「非常食と北斗の拳のコラボはいいアイデアだなと感心した。僕も手元に置きたいくらい」とコメント。吉田社長は「北斗の拳のパロディーや、堅パンのとんでもない硬さを面白がりながら、防災の意識を高めてほしい」と話す。
問い合わせは光工業(082-433-5401)へ。
〈北斗の拳〉
1983~88年に週刊少年ジャンプで連載され、単行本の累計発行部数は1億部を超える。核戦争によって文明が失われ、暴力が支配する世紀末を舞台に、北斗神拳の伝承者・ケンシロウが救世主として成長していく物語。宿敵のラオウらも人気が高い。