「北斗の拳」が非常食に 北九州・くろがね堅パンとのコラボで誕生
記事 INDEX
- 生き延びるパワーを
- 非常時の救世主に!
- 備える時がきたのだ
「堅(かた)ぁ!! 堅あたたたたーっ!!」「お前はもう…喰(く)っているっ!!」――。人気漫画「北斗の拳」の主人公・ケンシロウが容器に描かれた「世紀末保存食 北斗の堅(けん)」が9月5日に発売されました。鉄の街・北九州で生まれ、鋼のように硬いとされる菓子「くろがね堅パン」とのコラボ商品です。見た目も中身も「ハードな硬さ」で、頼りになる非常食が誕生しました。
生き延びるパワーを
この保存食は、ココア味で税込み1620円。直径10センチ、高さ12センチの缶の中に、スティックタイプの堅パン20枚が4袋に分けて入っています。特設サイトで購入でき、缶を開封しなければ5年間保存できるそうです。
個包装には「わが備えに 一片の悔いなし!!」「棚をみよ!! みえるはずだ あの非常食が!!」などのセリフとともに、ケンシロウ、ラオウ、トキ、ジャギの北斗四兄弟がデザインされています。
開発したのは、食品の缶やスプレー缶、非常食などのメーカー・光工業(広島県東広島市)です。非常食の備蓄に関心をもってもらうため、「面白さ」や「懐かしさ」で目にとまる場所に置いてもらえる保存食をつくろうと、企画がスタートしました。
自身も熱烈なファンという吉田龍一社長(34)は「備蓄をしていない人は特に40~50歳代の男性が多く、そうした世代に“グッズ”として飾ってもらえたら」と話します。
同社が今年5~7月に「Makuake」のサイトで応援購入を募ったところ、初日で目標額の30万円に到達。期間中に250人が応じ、154万1900円が集まりました。購入者からは「我が青春の漫画。世紀末危機に備えておきたい逸品」「被災した時、パッケージが北斗の拳なら頑張ろうという気持ちになる」「グッズを集める感覚で備蓄もできる」といったコメントが寄せられました。
ネット注文のほか、北斗の拳のグッズとしても販売される予定です。今年は連載開始から40年の節目で、10月に東京・六本木で開幕し、名古屋、神戸、福岡を巡回する「北斗の拳 40周年大原画展」の物販ゾーンに並ぶことになっています。
非常時の救世主に!
光工業が昨年夏、作者の原哲夫さんらが設立した漫画出版社「コアミックス」(東京)に企画を提案したところ、協力を得られる運びに。コアミックスの担当者は「マニアにはグッズを開封せずに飾る”文化”があります。非常食との相性もいいし、漫画のイメージにもピッタリ」と話します。
北斗の拳は、核戦争によって文明が失われ、暴力が支配する世紀末を舞台にしたストーリーです。北斗神拳の伝承者・ケンシロウが救世主として成長していく姿を描いています。
両社の間で、どのような非常食が作品の世界観にマッチするのか検討していたところ、くろがね堅パンを推す声が上がり、意見がまとまったそうです。
「くろがね」とは鉄のこと。くろがね堅パンは大正末期に官営八幡製鉄所の従業員の栄養補給食として生まれました。小麦粉や砂糖、練乳などを混ぜた生地を高温で焼き、長期間保存できるよう水分を徹底的に飛ばした菓子です。
光工業が手がける缶の素材に、北九州で作られたブリキの板を使っている縁もありました。吉田社長は「鉄の街への親近感もあり、くろがね堅パンしかないという結論になりました」と振り返ります。
堅パンを製造する「スピナ」(北九州市)の浜口勝克・堅パン課長(56)は「福岡以外の人にも堅パンを知ってもらえる良い機会」と、吉田社長のオファーに応えました。
備える時がきたのだ
吉田社長の狙い通り、Makuakeの応募には40~50歳代の男性が目立ったといいます。社員などに聞き取ったところ、自宅に備えがあっても、管理は妻任せで夫は保管場所を知らなかったり、備蓄したまま購入時期が分からなくなったりするケースがあることも分かったそうです。
吉田社長は「一人ひとりが、いざという時すぐ手に取れる非常食を置いてほしい」と訴えます。「面白そうだから買ってみた」という気軽な理由であっても、「災害が発生したとき『役に立った』と思ってもらえればうれしい」と話しています。
©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983, 版権許諾証EM-203