太平洋戦争末期の沖縄戦で戦死した福岡市の提灯(ちょうちん)職人、伊藤半次さんが、戦地から家族に送った絵手紙を紹介する企画展が、福岡県筑後市の九州芸文館で開かれている。
半次さんは、現在の福岡市博多区にあった提灯店の長女と結婚。提灯職人として腕を磨くため、日本画を学んだ。1940年、召集されて旧陸軍に入隊し、翌年、妻と3人の子どもを残して満州(現中国東北部)に出征した。
家族を思い400通
絵手紙には、明るくユーモアあふれる文章とともに、軍隊での日々や福岡に残した愛する家族の姿などが描かれている。軍事郵便で家族に送り続けた絵手紙は約400通に上るという。
44年秋に沖縄へ転戦し、翌年6月、32歳の若さで戦死した。沖縄から届いた便りは3通で、自ら描いた絵手紙ではなく、軍艦の絵などが印刷されたはがきを使っていた。44年11月の日付が記された最後の便りは、子どもらが仲良くするよう願う内容だった。
企画展では、実物の絵手紙や、絵手紙を拡大して説明を加えたパネル、戦地で撮影した本人の写真などを展示している。
九州芸文館の江頭豊年・事業部長は「最後まで家族に優しい気持ちを伝え続けた伊藤さんの人生に思いを寄せ、平和な日常がいかに尊いものかを考えるきっかけにしてほしい」と話している。
10月1日まで
10月1日までで午前10時~午後5時。入館無料。月曜休館。8月20日午前9時半から、半次さんの孫で絵手紙を所蔵する伊藤博文さんの講演(予約不要)がある。問い合わせは同館(0942-52-6435)へ。