百貨店の中元商戦がスタートした。価格高騰が続くコメの需要が贈答用でも高まる一方、商品の確保ができずに取り扱いを断念した店舗もある。ギフト市場が年々縮小する中、各社は工夫を凝らして需要の取り込みを図っている。
百貨店 コメに熱視線
岩田屋三越(福岡市)は6月4日、福岡市・天神の岩田屋本店に特設のギフトセンターを開設した。2日にはオンラインでの受注も始めており、九州産のコメ商品の注文が例年より約2割増えているという。
5日に特設センターを訪れた福岡市の会社員男性(42)は、関東の親戚向けにコメを注文した。「今、一番もらってうれしいのはコメだと思う」と話す。
仕入れ苦戦 数量を限定
井筒屋(北九州市)は、創業90周年を記念し、地元の酒造会社の協力を得て純米大吟醸(720ミリ・リットル、税込み3000円)を300本限定で用意した。
中元ではこれまで新潟県産米を5キロ5000円前後で扱っていたが、今回はカタログへの掲載を見送った。取引先から安定的に仕入れられなかったうえ、他の業者でも価格が大幅に上がっていたのが要因だ。パックご飯の商品についても、今回は数量限定とした。
一方、6月1日にギフトセンターを開設した博多阪急(福岡市)では、地元企業が手がける冷凍ピザセットの需要が伸びているという。定番商品のそうめんについても、「コメの価格が上がっていることから例年より増える可能性がある」(担当者)とみている。
◎
ただ、中元は年々、市場が縮小している。かつて会社員が上司らに贈るのが一般的だったが、「虚礼廃止」の風潮が強まっていることが背景にある。調査会社の矢野経済研究所は、2025年の市場規模を前年比390億円減の5800億円と予測しており、20年と比べると2割近く落ち込む見通しだ。