"忘れてはいけない"こと 黒田征太郎さんが「第五福竜丸」を絵本に
見本を手に思いを語る黒田さん
北九州市を拠点に活動するイラストレーター・画家の黒田征太郎さん(87)が、米国の水爆実験で被曝(ひばく)した漁船「第五福竜丸」をテーマにした絵本を制作した。世界各地で紛争や戦争が続くなか、「忘れてはいけないことがあると伝えたい」との思いで形にした。
<第五福竜丸> 1954年3月1日、マーシャル諸島・ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験で被曝した静岡県焼津市のマグロ漁船。乗組員23人全員が被曝し、うち1人が半年後に死亡した。全長33メートルの木造船で、東京都立第五福竜丸展示館で保存・展示されている。
「竜が怒ってる」
絵本は「第五福竜丸とボク」。黒田さんの幼少期の戦争体験などを重ねた少年「ボク」が、第五福竜丸の乗組員となり水爆実験に遭遇する物語。黒田さんの同級生で、広島原爆で亡くなったとみられる「たーちゃん」も登場する。
<竜が 竜が 怒ってる 人間たちが 海を 汚した 人間たちが 海を 殺した>
自然の化身の竜が登場し、人間に激しく怒る場面も描いた。物語の構成は、絵本を出版した「石風社」(福岡市)の福元満治代表(78)が担った。
福竜丸を題材にした米国の画家に感銘を受けていた黒田さんは1996年、その作品を東京都立第五福竜丸展示館で観覧。船とも対面して「忘れてはいけない」との思いを抱き、その後は船を描いた作品を同館で展示するなどしてきた。
福竜丸の思いを
2025年11月、同館学芸員の安田和也さん(73)から26年6月の開館50周年に合わせ、過去の作品を展示したいとの申し出を受けた。黒田さんは「新しく描きたい」と応じ、今の福竜丸を見たいと、知人の映像ディレクターに撮影を依頼。「写真を見たら、福竜丸が『俺のことを描いていいよ』と言ってくれた。福竜丸が伝えたいことを聞き取って、絵本にしようと思った」と振り返る。
絵本には、大漁を夢見て遠洋に出た乗組員たちの姿も描かれ、核の脅威や理不尽さも伝わってくる。黒田さんは「福竜丸は、年老いながら今も生きている。殺し合いをする人間たちに命のことを伝えてくれる」と話す。安田さんは「船のことを多くの人に知ってもらうきっかけになる」と期待している。
絵本はB5判32ページで1650円(税込み)。7月30日から同館で先行販売され、8月中旬頃から書店に並ぶ予定。制作費などをクラウドファンディングの専用サイトで9月15日まで募っている。
■ 福岡市で個展開催
出版に合わせた黒田さんの個展「LUCKY DRAGON No.5」が福岡市博多区のギャラリー「OVERGROUND(オーバーグラウンド)」で開かれ、絵本の原画など約1000点が展示されている。8月9日までの午前11時~午後7時。無料。問い合わせは同ギャラリー(092-984-0896)へ。







