軍艦防波堤として眠る不沈艦「涼月」の名がワインに
太平洋戦争末期の1945年4月、戦艦「大和」と共に沖縄への海上特攻に出撃した駆逐艦「涼月」の名を冠したワインが作られた。涼月は戦後、防波堤として埋設され、北九州市若松区の岸壁で眠りについている。その防波堤に関するイベントや情報発信に取り組む市民グループが、ワインを通してより広く知ってもらおうと企画した。
役目を終えて洞海湾に
1948年、戦後の資材不足を補うため、軍艦としての役目を終えた「涼月」「冬月」「柳」を洞海湾の入り口に据え、防波堤として再利用した。現在は柳だけが地表に姿を見せているが、経年や海水などの影響で劣化が進んでいる。
涼月は、3度も大破しながら沈没を免れた不沈艦だった。沖縄へ向かう途中、鹿児島県・坊ノ岬沖の海戦で大和は沈んだが、涼月は艦の前方を激しく損傷しながら、北極星を頼りに後進航行で佐世保へ生還した。
後進で帰還する艦の姿
涼月を題材にした作品の朗読や防波堤の清掃を行っている同市戸畑区の中嶋かつ子さん(62)が、市民グループ「軍艦防波堤連絡会」の松尾敏史代表(62)に、関連商品を作って防波堤をPRすることを提案。地元の若松区にブドウの栽培から醸造までを手掛けるワイナリーがあることから、ワインに決めた。
連絡会の活動組織「軍艦防波堤を語る会」会長でイラストレーターの柴田息吹さん(31)がラベルのデザインを手掛け、後進で佐世保を目指す涼月の艦影と月を描いた。松尾代表は「ワインを通して軍艦防波堤の存在が広く知られ、世代を問わず誰もが知る常識になってほしい」と期待する。
1本(750ミリ・リットル)4800円で、200本限定。購入の申し込みは、酒の阿波屋へ。