一人でも多くの命を!「生き残る術」を漫画で説く北九州の消防士
「一人でも多くの人に助かってほしい」と絆マンGAさん
記事 INDEX
- 命より大切なものはない
- 小さな体のぬくもりに涙
- 自費で小学校に本を配布
北九州市消防局のベテラン消防士(63)が、人命救助や災害時の避難方法を漫画で伝えるシリーズ本「消防士の知恵で生存率が飛躍的アップ! 生き残る
命より大切なものはない
消防士は、「絆マン
本では心臓マッサージや初期消火の方法などを漫画や文章で解説。「あなたの大切な人が突然倒れて心肺停止状態になったらどうしますか」との問いに、漫画では時間の経過とともに救命率が下がることを表すグラフを示し、居合わせた人が心肺蘇生を行うことの大切さを描いている。
絆マンGAさんの作品
「なにもできなくて後悔することがないように、知識と技術を修得しておきましょう」とのメッセージも添えられている。火災の避難では、忘れ物があっても元の場所に戻らないことを伝え、「戻ると危険だよ。命より大切なものはありません!」と強調している。
小さな体のぬくもりに涙
北九州市八幡西区出身。地元の高校を卒業後、消防士になった。使命感が高まるきっかけとなったのは21歳の時。火災現場に向き合う日々から、新たに配属された救助隊で出動した現場での出来事だった。
乗用車が横転した現場に駆けつけると、若い女性が道路にうずくまっていた。乳児が車に閉じ込められたままだという。バールでドアをこじ開けて車内に潜り込み、後部座席近くの天井でぐったりした乳児を見つけた。「生きていてほしい」と願いながら両手で抱え、先輩隊員に引っ張り出してもらった。
母親に手渡そうとした時、乳児は大きな泣き声を上げた。小さな体のぬくもりを通して命の尊さに触れ、涙が止まらなかった。
以来、特別救助隊長を14年務めるなど、現場一筋で命と向き合った。阪神大震災や10年前の熊本地震、西日本豪雨の被災地にも派遣された。救えた命がある一方で、それよりも多くの失われる命を目の当たりにした。
「皆に防災や救命の知識があれば、助かる命があるのではないか」。そんな思いがくすぶり続けた。
自費で小学校に本を配布
50歳を超えて定年を意識するようになり、「人生でやり残したことはないか」と考える中、ふと思い出したのが、幼少期にはまっていた漫画だった。赤塚不二夫の「ギャグゲリラ」などに影響され、子どもの頃から好きで描いていた。久しぶりに描いた4コマ漫画が2017年度の「北九州国際漫画大賞」で部門賞の一つ「
その後、救命救助についての漫画を北九州市の漫画制作会社「コルト」のサイトを通じてインターネットで配信してきた。「より多くの人の目に留めてもらいたい」と、再任用後に出版を決意。消防局に許可を得て「生き残る術」のシリーズを刊行した。
絆マンGAさんの上司にあたる消防署長は「自身の個性を消防や防災の活動に生かしており、若い隊員たちにも刺激になっている」とたたえる。
自ら費用を負担し、2025年春、市立小学校126校に書籍を配布した。東京都小笠原村や沖縄県の離島など、消防本部がない自治体の消防団などにも贈っている。
配布を受けた北九州市立則松小の佐藤哲也校長(64)は「漫画は親しみやすく、視覚的で学びやすい。防災教育は大切さを増しており、本当に良い教材だ」と感謝する。
絆マンGAさんは「子どもから大人までがたくさんの知識を得て、いざという時に活用してほしい。日常からの備えをおろそかにしないことが何より大切だ」と力を込める。
「生き残る術」シリーズは25年1月から26年3月までに計3冊(いずれも四六判)を刊行。1、2作目は各224ページ、各1650円(税込み)。3作目は250ページ、1760円(同)。北九州市内の書店やインターネットで購入できる。







