久留米を訪れた吉永小百合さんに主演映画「いのちの停車場」にかけた思いを聞いた

作品に登場する「まほろば診療所」のメンバー ⓒ2021「いのちの停車場」製作委員会

記事 INDEX

  • 人生の最期に寄り添う医師の役
  • コロナ禍で一つになった現場
  • 100年残る映画に出演したい

 主演映画「いのちの停車場」(成島出監督)が公開中の吉永小百合さんが、舞台あいさつに訪れた福岡県久留米市で取材に応じました。余命いくばくもない患者やその家族に寄り添う在宅医師が、命と死を見つめる物語です。コロナ禍での撮影や、作品にかけた思いなどを語ってくれました。


吉永小百合さん

 1945年、東京都出身。59年「朝を呼ぶ口笛」で映画初出演。「キューポラのある街」(62年)、「青春の門」(75年)、「細雪」(83年)、「北のカナリアたち」(2012年)など多くの映画作品に出演。近作に「北の桜守」(18年)、「最高の人生の見つけ方」(19年)。今回が出演122作目となる。

<ストーリー>
 東京の救命救急医だった白石咲和子(吉永さん)は金沢に帰郷し、「まほろば診療所」(院長役に西田敏行さん)で在宅医として再出発する。訪問看護師(広瀬すずさん)、咲和子を慕うスタッフ(松坂桃李さん)と共に、死期が迫る患者やその家族たちと出会う中で、その人らしい生き方とは何かを考えるようになる。やがて自身の父親(田中泯さん)が病に倒れる。父は痛みに苦しみ、あることを咲和子に頼もうとしていた――。


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コロナ禍で一つになった現場

――コロナ禍の大変な状況での撮影で感じたことは。

 企画段階では、まだコロナのコの字もないときでしたが、シナリオができた段階で蔓延(まんえん)してきて、どうやって作っていくか考え直さなければいけなくなりました。命に関して演じる側も、スタッフもみんなしっかり考えました。密度の濃い現場になりましたし、みんな「しっかりこの作品をやらなければいけない」と一つになった現場でした。


久留米市を訪れた吉永さん

 リハーサルをさっとやったらすぐ本番。何度も撮るのではなく、「この1回で」っていう思いで。デジタル化した現在では、カットをこまごまと撮影し、監督が編集でつなぎますが、今回はワンシーンをワンカットで撮ることが何度もありました。私が10代の頃はよくあったんです。昔の言葉で言う「どんぶり」です。ぱっと緊張するので、特に医療のシーンではいい効果になったと思います。松坂さんは「どんぶり」を知りませんでした(笑)。

――122作目で初めて医師を演じたとは意外でした。

 1歳か2歳のときに肺炎になって、生きるか死ぬかで何度も入院して病院の先生に助けていただきました。幼い頃は「看護婦しゃまになる」って言っていたみたいです。そういう思いにもかかわらず、医者の役のオファーはなかった(笑)。

 でも一度やりたいって思いがあったんですね。それで成島監督と作品を探し、南杏子さんっていう本物のドクターが書いた作品に巡り合いました。私の役は、治療するのではなく寄り添っていく。病人に対し心から支えることの大切さ、そういう医療のあり方が、とても大事だと分かりました。


劇中の場面 ⓒ2021「いのちの停車場」製作委員会

――ラストシーンは鮮烈な映像で、意外な終わり方でした。原作小説と異なる結末は、吉永さんと成島監督が話し合って決めたそうですが。

 コロナ禍になって多くの人が、まったく家族と会えず、接触できずに、人間らしい亡くなり方ができなくなった現状で、そこの描き方がより難しくなりました。私は「はっきり表現するのはどうなのでしょうか」と意見を言って、ラストシーンを撮りました。映画を見たお客さまがどう受けとめるか、委ねています。


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100年残る映画に出演したい

――劇中、いろいろな生の終わり方が描かれています。撮影を通じて吉永さんの死生観に変化はあったのでしょうか。

 正直、私自身はまだ、自分の「人生のしまい方」を考えてないです。死生観っていうのはそんなにないんですけど、ただ、両親を送ったことを思い起こして、この世界から去るときは自分で決めて、いい選択をして――、という思いをしています。

――吉永さんにとって映画とはどういう存在なのでしょうか。

 小学生のころ、映画は教科書でした。「二十四の瞳」や「ビルマの竪琴」を見てとても感動して、それで映画女優に憧れました。実際に映画の世界に入っても、学校になかなか行くことができなかったから、一つ一つの映画が自分の教科書でした。やっぱりいい映画は100年残るんじゃないかな。「それだったら100年残る映画に出演したい」っていう思いで出演しています。


映画は教科書だったという吉永さん


 ステイホームの時期に「飢餓海峡」と「ゴッドファーザー」を見て、やはり素晴らしいと思いました。将来に残る映画に出演したい思いは、ずっとずっと続いています。そういう思いがなくなったときはもう、満足して辞めるときだと思うんです。

――最後に一言、福岡の皆さんにメッセージを。

 完成できるかどうか、とても大変な思いで作った映画です。私たちがこれから生きていくことや、家族との関係とかへの思いを込めた映画になったと思います。ぜひ映画館で見ていただきたいと思います。


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