無機質なアパート壁面がキャンバスに 日々の生活に彩りを添える街角ギャラリー
アパートの壁面に描かれた、色鮮やかなヒマワリと幸せそうな家族――。北九州市小倉南区葛原東の住宅街で、このほど改修を終えたアパート「COBOL kuzuhara」が、遊び心あふれるアートで存在感を放っている。足を止めて見入る人もおり、ちょっとした"名所"になっている。
建物は築42年の3階建て。DIYによるリノベーションで、古いアパートを再生するプロジェクトに取り組む同市戸畑区の「ローリエエフ合同会社」の今橋智恵美さん(39)が、アートパフォーマーとして活動するカラリズムリサさんに声をかけて実現した。
北九州の市花である「ヒマワリ」をテーマに、ヨーロッパの街角のような雰囲気を演出。壁面にはヒマワリを手に駆ける子どもが描かれ、その子が走る方向へと視線を移していくと、花を受け取った幸せそうな家族の姿がある。"無骨"なガスボンベも、作中の柵の一部として情景に溶け込んでいる。
今橋さんは同市門司区花月園のアパートでも昨年、九州産業大の学生と一緒に配管と作業員を壁3面に描いた。「鉄の街・北九州」から、製鉄所や工場群をイメージし、アイデアを膨らませたという。
同区東門司の斜面にある住宅の外壁には、かわいらしい猫の姿がある。借り主が7匹を飼う愛猫家で、「じゃあ、せっかくだから」と壁面いっぱいに7匹を描いた。借り主は「存在感抜群の自慢の住み家になった」と喜んでいるそうだ。
家の壁面をキャンバスに見立て、自由に表現するアート。海外では街のにぎわいを演出する手法として受け入れられているが、日本では落書きと混同されるなど、まだまだ理解されていない面もある。
無機質な壁から生まれる会話や交流。街に彩りを添え、生活に潤いを与える"ギャラリー"がもっと広がると楽しいだろう――。写真を愛する一人として、そう思った。