炭鉱の時代から変わらない味 直方で愛されてきた「カレー焼き」

直方市民に愛されてきた「カレー焼き」

記事 INDEX

  • もちっと食感に野菜の甘み
  • 片手でも食べられるように
  • いつもの味をいつでも提供

 福岡県直方市に、古くから市民に愛される味「カレー焼き」があります。カレーをもちもちの生地で挟んで焼き上げた商品で、細長い形が特徴的。その味と歴史を知るために、50年以上の歴史を受け継ぐ店「からあげ&カレー焼き 次元」を訪ねました。

もちっと食感に野菜の甘み

 JR直方駅の近くに店を構える「次元」。地元の主婦らが、カレー焼きを買い求めにやって来ます。カレーの代わりにクリームやあんこを入れたもの、唐揚げやたこ焼きなどを販売。店の前に置いたテーブルで、できたてを楽しむこともできます。


JR直方駅の近くにある「次元」

 カレー焼きは1個160円。早速注文し、店長の中園友貴さん(25)に調理の様子を見せてもらいました。型に生地を流し込み、野菜や肉を長時間煮込んだカレーをその上に追加。型を閉じて焼き上がりを待ちます。最後に「直方」の焼き印を入れれば完成です。


 食べてみると、もちっとした食感は想像以上です。野菜の甘みが詰まったカレーとの相性もよく、やさしい味わいが口の中に広がりました。


もちっとした食感とカレーの風味がよく合う

 「自宅に持ち帰った後も、電子レンジで温めればもちもちになります。さらにトースターで焼くと『外はカリっと、中はもちっと』に変わるので、2種類の食感を楽しむこともできますよ」。中園さんが教えてくれました。

片手でも食べられるように

 中園さんによると、カレー焼きの起源には諸説あるものの、炭鉱で栄えていた頃、労働者が片手でも食べられるように作られた惣菜パンから派生したといいます。細長い特徴的な形は、縁起のよい”金の延べ棒”をイメージしていると伝えられます。


縁起のよい金の延べ棒をイメージ

 「次元」の前身となる店ができたのは50年以上前。当時は県内に他の店舗もあったそうです。しかし、時代とともに数は減り、2代目が切り盛りしていた店も10年ほど前に一度閉まりました。「歴史を絶やすわけにはいかない」と新しいオーナーが引き継ぎ、「からあげ&カレー焼き 次元」と名前を変えて、伝統の味をつないでいます。

いつもの味をいつでも提供

 最近は、直方市内外のイベントにも積極的に出店するなど、カレー焼きの魅力を広めようと取り組んでいます。中園さんは「かつて幅広い人に食べられていたこともあり、懐かしんで購入してくれるお客さんもいます。市外では、知らない人がまだまだ多いので、もっと認知度を上げたいです」と話します。


スタッフたちの明るさも店の魅力の一つ

 地元の人々に支えられてきた歴史も大切にしています。入学したての初々しい姿だった高校生が巣立っていったり、家族ができ子どもを連れて来店する人がいたり――。地域とともに歩む姿は、創業した頃から変わりません。

 中園さんは「みんなに愛されているのは、いつものカレー焼きがいつでも食べられるからだと思います。これからも“変わらない味”を提供していきたいです」と話しています。



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