命を守る「どうしたと?」 言葉の力を訴える福岡県の啓発動画

福岡県の啓発動画の一場面

記事 INDEX

  • かける言葉の違いで…
  • 「ゲートキーパー」に
  • LINEで気軽に相談を!

 福岡県が若者らの自殺を防ごうと制作した動画が、広告主でつくる公益社団法人・日本アドバタイザーズ協会(JAA)主催のコンクールで入賞するなど高い評価を受けています。「言葉には、生死を分ける、力がある。」というメッセージで、周囲の声かけの大切さを訴える内容です。

かける言葉の違いで…

 15秒間の動画は、主に三つのシーンで構成されています。


 始まりは、女子高校生が学校に行きたくなさそうな様子で家の玄関に座り込んでいるシーン。左右に分かれた画面に、それぞれ異なる声かけが表示されます。

 「どうしたと?」と声をかけられた女子高校生は、顔を上げて振り向きます。一方、「はよ行かんね!」という言葉には、うつむいたまま反応しません。続いて、「言葉には、生死を分ける、力がある。」のテロップが画面に浮かび上がります。


動画の最後に表示されるメッセージ

 動画は「言葉で先を照らしてください。」のメッセージで締めくくられます。


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「ゲートキーパー」に

 この動画は福岡県が2021年、「自殺予防週間」(9月10~16日)に合わせて作り、JR博多駅構内のデジタルサイネージで放映しました。多くの人が行き交う雑踏の中でもメッセージが伝わるよう、視覚に訴えて印象に残る構成にしたそうです。

 同県は動画の内容を検討する中で、若年層らの自殺を防ぐ「ゲートキーパー」(命の門番)が少しでも増えるように――との思いを込めました。ゲートキーパーは「悩みに気づき、声をかけてあげられる人」として重要性が指摘され、県は21年度から精神保健福祉センター(春日市)でも養成研修を始めるなど普及に取り組んでいます。


研修受講者向けに福岡県が作った「ゲートキーパー手帳」


 動画は今年1月、「第60回JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」で、屋外・交通広告部門のメダリストを受賞。審査員からは「”言葉”の重みが感じられる」「何げない言葉が人によって大きな負担になることがわかる」といったコメントが寄せられたそうです。

LINEで気軽に相談を!

 福岡県のまとめによると、県内の自殺者数は2019年までおおむね減少傾向にありましたが、コロナ禍で増加に転じました。12年の1186人が19年は816人に減ったものの、21年には913人に増加。22年は減少したとはいえ、878人となお高い水準にあります。


 このうち20歳未満は、19年の21人から21年には2倍近い39人に急増。コロナ禍に伴う学校行事の縮小で友人らとの関係が希薄になりがちだったほか、ステイホームによる家族間トラブルなども影響した可能性が考えられるとのことです。22年は35人と4人減りましたが、若い命を守る取り組みが求められています。

 県は動画での啓発のほか、無料通信アプリ「LINE」による相談窓口「きもち よりそうライン@ふくおかけん」(LINE ID:@469xxbam)を開設。毎週月・木曜の午後4~7時(受付は6時半まで)、県内在住者、通勤・通学者を対象に、様々な悩みの相談に応じています。


LINEプロフィール画像

 これから春本番を迎えますが、「異動などの環境変化で自殺率は上がる傾向があります」と県の担当者。「身近な人の変化に気づいたら、まずは『どうしたと?』と声をかけてほしい。一人ひとりのちょっとした気遣いで、心も温かな福岡県にしていきたいです」と話しています。

悩みごとを抱えていたら…ひとりで悩まないで相談してください。

▶自殺予防に関する福岡県内の相談窓口はこちら


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