宇宙水準の高機能素材!キャンプを安全に楽しむ究極の手袋が完成
記事 INDEX
- 「究極」を追い求めて
- 「宇宙」にたどり着く
- CFでまさか!の反響
キャンプで使うこだわりの手袋を――。福岡県久留米市の作業用手袋メーカー「東和コーポレーション」が、宇宙服やスペースシャトルの胴体などに使われる素材を用いた「アウトドアグローブ」を開発した。耐熱性が高く、刃物も通しにくい”超タフな手袋”として話題を集めている。
「究極」を追い求めて
「もっと本物志向じゃないと…」
開発のきっかけは2020年秋頃、新規事業の責任者である岩下瑞樹さん(49)に対して、取引先のアウトドアショップ担当者から放たれた言葉だった。
同社は同年9月、たき火の際に使える牛革のアウトドア用手袋(税抜き1300~1570円)を発売。プロ仕様の手袋をアウトドアシーンに合うデザイン、求めやすい価格で提供する――というコンセプトで、ホームセンターを中心に好評を得ていたという。
ところが、キャンプ好きが集うアウトドア用品の専門店では、有名ブランドが手がける商品が数千円~1万円台の価格帯で並んでいる。人気のブランド品とは一線を画す個性がなければ、店頭に置いてさえもらえなかった。
「機能で劣るはずはない」――。過酷な現場で作業する労働者の手を守り続けてきたメーカーとして、安全性と使いやすさに関しては負けられないとの思いがあった。「究極」を求めて、岩下さんらのプロジェクトが始動した。
1947年創業の同社は当初、軍手や革手袋を八幡製鉄所などに納めていた。1968年、「厚くて硬い」が当たり前だった作業用手袋に”革命”を起こし、「軟らかくて丈夫」をうたったゴム手袋「トワロン」を発売してロングセラーに。現在、建設現場から工場、家庭に至るまで、用途に応じた2000種以上の手袋を製造販売している。
老舗のプライドをかけて、「採算は度外視し、品質、機能性で妥協のないものを作ることになりました」と岩下さんは振り返る。
「宇宙」にたどり着く
東和コーポレーションは、消防士が火災現場で使う特殊な手袋も製造しており、耐火のノウハウは持っていた。ただ、消防士の手袋は、現場で目立つ白やオレンジ一色が主流で、アウトドア店で手に取ってもらう自然に調和するデザインが求められた。
素材も、まき割りや火おこしといった様々な場面を想定し、刃物や炎から身体を守れる安全性を重視した。「熱に強くて強度のあるものを極めていった結果、宇宙開発で使われている素材にたどり着きました」
開発した手袋は、宇宙服やスペースシャトルなどに用いられるアラミド繊維の素材を使用。同じ繊維で、消防服などの耐火性や耐熱性に優れた生地、防弾チョッキに使われる高い強度の生地を組み合わせて製作している。
デザインはアパレル関係の事務所に依頼し、活動しやすいストレッチ性とフィット感を兼ね備えた設計に。手のひら部分に張られた牛革が滑りを抑え、握ったり、つまんだりの細かい作業も容易にできるよう考慮されている。
岩下さんらが調べたところ、市販されているキャンプ用手袋の多くがフリーサイズだったそうで、「女性にも使いやすいものを」とS~XLの4サイズを用意した。「斧(おの)やナイフを使う時、手に合わないものをつけているのが一番危険です」と岩下さんは話す。
CFでまさか!の反響
商品化に向けた試験販売の形で、3月24日にクラウドファンディング(CF)をスタート。「Makuake」のサイトで、応援購入(価格は税込み1万400円から)を募ったところ、その日のうちに目標金額の30万円を突破した。CF開始から2週間で100人近くが注文し、「作りの頑丈さに期待しています」といった声が寄せられている。
この大きな反響に、岩下さんは「まさかここまで期待されているとは。うれしい限りです」と驚きを隠せない。
一般向けの商品ながら、妥協を排して完成させたプロ品質で、災害時にも役立ちそうだ。専門店などからの問い合わせも入っており、7月頃にはアウトドアショップや東和コーポレーションの通販サイトなどで一般販売を始める方針だという。