埋文センターの収蔵庫見学ツアーへGO! 親子で甕棺ラビリンスに挑戦

収蔵庫に並ぶ甕棺(提供:福岡市埋蔵文化財センター)

 歴史の教科書でおなじみの板付遺跡の近くに、「埋文(まいぶん)センター」こと福岡市埋蔵文化財センターがあるのをご存知でしょうか?収蔵品の常設展示と企画展示は無料で観覧できるうえ、収蔵品の撮影やSNSへのアップも大歓迎。そして、夏は毎年恒例の小学生親子向け「収蔵庫見学ツアー」が行われます。考古学ファンでなくとも面白い、埋文センターの楽しみ方を紹介します。


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8月22日に収蔵庫見学ツアー

 昨年、記者は埋文センターの「収蔵庫暗闇ツアー」に親子で参加しました。真っ暗な通路に点在する弥生人の足跡を提灯片手に追いかけると、弥生時代の貝殻の腕輪や、呪術に使われていた人型の木簡などが突如現れ、クイズが仕掛けられていました。ちょっと、ホラー。そして「お宝をこんな間近で見ていいの?」と、意外な距離の近さに驚いたものです。


昨年の収蔵庫暗闇ツアー

 8月22日(土)に行われる今年の収蔵庫見学ツアーは、新型コロナウイルス感染症対策のため、暗闇ではなく、迷路仕様に。主に弥生時代の埋葬に使われた大小の「甕棺」がびっしり並ぶ「甕棺ラビリンス」を、クイズを解きながら脱出する趣向です。4回目の今年はクイズでどんな遺物が出る?どんな参加賞やご褒美(ほうび)がもらえる?それは当日のお楽しみ。


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ドッキリ!古墳時代の人骨も

 この収蔵庫は、イベント以外でも個人・団体の見学を事前申し込みで受け入れています。収蔵品は、土器や石器、青銅器、鉄製品、装身具、銅鏡、陶磁器など実に多彩。整然と並ぶコンテナを引き出しながら、気になる遺物を観察できます。


遺跡ごと、発掘された年代別に並ぶ収蔵品

 今回は取材の特例として、特別収蔵庫に眠る古墳時代の人骨を見せていただきました。なんと美しい後頭部。脳の大きさは現代人とさほど変わらないそう。関節や歯の状態などから20代の若者と推定されていますが、彼はどんな言葉を話し、どんな物を食べていたのでしょう。案内してくれた学芸員に「なぜ足の骨がないんですか?」と聞くと、「小さい骨は土にかえったと思いますが、死者のよみがえりを恐れて足の骨を取り除く例もあります」とのこと。もしや、ゾンビ対策?古墳時代の死生観になんとなく共感が湧いてきます。


全身人骨との対面は超レア!


 埋文センターは遺跡から出土した人骨を収蔵する、福岡市では希少な施設です。8月22日のツアーでは、この人骨の頭部だけがお出ましの予定だそうです。



収蔵庫見学ツアー「迷路から脱出せよ」
<日時>
 8月22日(土)①9:30〜12:00(15組)②13:00〜16:00(25組)  ※対象は小学生と保護者、1組5名まで。参加無料で、①②とも抽選  ※新型コロナウイルスの感染状況により、中止・延期の場合あり
<申し込み>
 代表者の氏名(ふりがな)・電話番号・郵便番号・住所、参加者全員の氏名・年齢(学年)、希望時間帯を記載してメール(maibun-c.EPB@city.fukuoka.lg.jp)、または来所で。8月14日(金)まで受け付け


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福岡市は埋文もりもりシティ

 埋蔵文化財センターは全国の自治体に点在しますが、福岡市の収蔵量は日本有数で、134万4652点(2018年時点)。福岡市には、国指定史跡である板付遺跡や元寇防塁をはじめ、1000か所以上の遺跡があります。埋文センターは、市内の遺跡から出土した埋蔵文化財を体系的に収蔵管理し、活用する拠点なのです。

 また、埋文センターは傷んだ埋蔵文化財の保存処理を行う"出土品の病院"でもあります。化学的処理に必要な機器を備え、中でも大規模なX線透過装置は埋文センターの秘密兵器。2011年、九州大学伊都キャンパスの建設に伴う発掘調査で「庚寅銘大刀(こういんめいたち)」が出土した際は、大刀に刻まれた金象嵌(ぞうがん)文字を発掘当日にスピード発見し、国重要文化財への指定にも貢献しました。


「庚寅銘大刀」の調査を解説するパネル


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遺物は語る、想像する楽しさ

 取材に応じてくれた、縄文時代が専門の板倉有大さんと海底遺跡が専門の佐々木蘭貞(ランディ)さんは"遺物の語り部"です。愛にあふれる解説のおかげで遺物がグッと身近に感じられました。


板倉さん(左)と佐々木さん


香椎A遺跡から出土した「三稜尖頭器」

 例えば、常設展示の「逸品紹介」コーナーに鎮座する「三稜尖頭器(さんりょうせんとうき)」。福岡市は弥生時代の遺跡が多い印象ですが、もっと古い後期旧石器時代の遺跡から出土したものです。「狩猟に使われた道具で、最低限の加工で高性能を発揮するよう作られています。サイズを小さくしたのは、獲物のサイズに合わせているのと、材料が貴重だったためですね」と、作った人に会ってきたかのように話す板倉さん。現代のビジネス書で指南されるような効率重視のモノづくりが、約2万年前に行われていたとは!遺物が語る情報をひもといて、太古の人や暮らしを私たちにイメージさせてくれる考古学ってスゴい。


博多湾で出土した「椗石」の復元品


 また、私たちにとって身近なJR博多駅から大博通り沿いに広がる中世の博多遺跡群では、商船の椗(いかり)を海に沈める「椗石」とそのミニチュアが出土しています。「航海安全のお守りか、模型か、玩具か…ミニチュアの椗石は使用目的がわからないからこそ想像するのが楽しいんですよ」という佐々木さんのモノ語りの続きは、動画「みんなでMYBUN!〜お気に入り遺物紹介〜」でチェックを。



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愛でよう!埋文はみんなの宝

 ところで、埋蔵文化財とはいったい誰のものなのでしょう。国のもの?博物館のもの?見つけた人のもの?
 答えは否!埋蔵文化財は「公共の財産=私たちみんなの宝」なのです。壊さない、失わないための管理は自治体や博物館などが担いますが、私たち市民には埋蔵文化財と出会い、愛で、自由に思いをはせる権利があるのです。約束事を守れば、触れることだってできます。

 「今、遺跡の上にいる皆さんは、知らないうちに遺跡を通じて、遠い時代とつながって毎日生きているんです。その足元の遺跡や、当時の人々の暮らしに関心を持ってほしい」という板倉さん。この夏は埋文センターでお気に入りの「MYBUN(私の埋蔵文化財)」を見つけて、遠い時代の人々とのつながりを体感してみませんか。



施設名 福岡市埋蔵文化財センター
所在地
福岡市博多区井相田2-1-94
開館時間 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
※月曜と12月28日〜1月4日は休館
入館料 無料 (収蔵庫の個人・団体見学は要予約)
電話番号 092-571-2921
公式サイト 福岡市埋蔵文化財センター

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