「革新しきれない人類」へ贈る 機動戦士ガンダム・富野由悠季 2000字インタビュー

映画は堕落した

--監督はアニメ作品で長年、「映画的なるもの」を志向してきました。映画の魅力とは

 芸能のジャンルの中で、映画は一番便利です。1人でも100人いてもワンフレームで収められ、時間も2、3分から2、3時間までできちゃう。そんな媒体は映画しかない。エンターテインメントとしての特性は圧倒的。ただ、映画は堕落しました。

--どういう意味でしょうか

 ツールが発達し、(スマホやタブレット端末で)手元でも見えるようになった。小さな画面で視界が狭くなると、人間の感性まで狭まってしまうことが大問題です。本来は大画面でみんなで見るのが前提なのに、芸能ではなく、個人的な楽しみになっています。大きなスクリーンが持つ描写力、迫力で、リアリズム以上の視覚的な快感、嫌悪感を手に入れられる、それが映画。日常を拡大して見せられるから楽しみなんです!

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理想を掲げないと政治や経済は愚昧な方向に進む


--富野監督と言えばやはり「ニュータイプ」論です。令和の時代に、ニュータイプをどう捉えたら良いでしょうか

 むしろ令和の時代になってからの方が深刻に、人のテーマとして考えるべきです。冷戦以後、結局、人は進化しなかった。やはり人類は理想論としてニュータイプ論を掲げておいて、そこを目指さないと、もっとぐちゃぐちゃになる気がします。私はニュータイプ論を一時放棄しました。「人の革新」って本当に難しい問題です。

 けど、もう一度、理想を掲げておかないと、政治、経済とも愚昧な方向に進むしかない。宗教や政治イデオロギーの対立、地政学、そういうものにとらわれて国家を統治していたら、地球の破滅は近い将来に起こるだろうから、そうでない方法論を編み出していかねばならない。そのために我々もニュータイプになろうではないか!!ということです。

ニュータイプ
「機動戦士ガンダム」の中で示された、人の革新、人類の新しいありようを示す概念。地球から宇宙への生活環境の変化への適応や、過酷な戦場体験の影響で、認識能力が飛躍的に発達し、言語を介さずに瞬時に他者と理解し合えたり、予知能力を発揮したりする。


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