成人式は「ママ振」で 思い出をつなぎ、コーディネートで現代的に
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記事 INDEX
- 母も着た懐かしい振り袖
- 小物で印象がガラリ一変
- 世代を超えて良いものを
成人式の振り袖に、母親が昔着た「ママ振(ふり)」を選ぶ人が増えている。経済的なだけでなく、サステナブル(持続可能)な社会づくりにもつながり、コーディネート次第で現代的に着こなせる。
母も着た懐かしい振り袖
8月中旬、福岡県久留米市の老舗「田中屋呉服店」本店は、成人式の準備に訪れた親子連れらでにぎわっていた。
赤い振り袖を羽織り、首元を飾る重ね衿(えり)と半衿を選んでいたのは、那珂川市の西南学院大2年、木本和花(のどか)さん(20)だ。「どっちがいいかな」と、同行した母親の美和子さん(46)と祖母の吉田清子さん(73)にも意見を求めた。
振り袖は28年前、美和子さんの姉の成人式のために購入し、美和子さんも着た。森英恵さんのデザインでチョウや花の柄が美しく、「奮発しました」と清子さん。長い間しまいこんでいたが、和花さんが「着たい」と希望した。
小物で印象がガラリ一変
一般的にママ振は、母親の時と同じように着るとひと昔前の印象になりがちだが、小物を替えるだけで変わるという。同店チーフの森田瑞稀さん(22)によると、最近は胸元を華やかにする傾向で、半衿や重ね衿は柄物やラメ、刺しゅう、レースなどが主流だ。
帯揚げや帯締めも鮮やかな色や柄物が好まれ、胸元で花のような形に結んだり、脇にリボンのような結び目を作ったりして個性を演出する。森田さんは「思い入れのある着物を大事にしたいという希望が多い。多様な好みに合わせて提案しています」と話す。
和花さんは、1時間半ほどかけてレースの重ね衿や花飾り付きの帯締めなどを試し、「成人式が楽しみ」と満足そう。美和子さんも「私の時とは印象がガラッと変わったね」と目を細めた。
世代を超えて良いものを
着物専門誌を発行する「きものと宝飾社」(京都市)の編集長、松尾俊亮さん(42)によると、ママ振は5年ほど前から購入やレンタルに並ぶ選択肢として紹介され、今では推定で4割を占める。
母親世代が成人を迎えた1990年代頃までは質の良い着物が多く売れていたことに加え、若い世代の価値観の変化も背景にあり、「昔は『お下がりは恥ずかしい』だったのが、『良いものを受け継いだ』と誇れるようになった」と説明する。SDGs(持続可能な開発目標)の理念が浸透してきたことも影響しているそうだ。
ママ振を希望する人に向けた様々なプランもある。
北九州市の「うめね呉服店」は、帯締めや重ね衿、草履、バッグなどの小物のほか、着付けや提携写真館での撮影もセットにして販売する「ままふりコーディネートコース」(10万7800円から)を提供する。
久留米市の「蝶屋」のプランは小物のコーディネートが2万4750円からで、母親と娘の体形が異なる場合に寸法を調整するリサイズや、クリーニングも受け付けている。リサイズなどは3か月ほどかかることもあり、同店の緒方星羅さんは「早めに振り袖の状態を確認しておくことが大事」と呼びかける。
福岡市の工房「浅井染色整理工場」は、ママ振のクリーニングや仕立て直しなどを受け付ける専用サイトを設けており、年間80着ほどの依頼があるという。元々着物は、ほどいて反物に戻して洗う「洗い張り」や仕立て直しなどを施すことで世代を超えて長く着続けられてきた。牛方宏紀専務は「祖母や母から振り袖を受け継ぐことで、親子の絆が一層深まればうれしい」と話す。
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