架空の物語の登場人物を演じたり、謎解きに挑戦したり 「体験型エンタメ」が人気
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記事 INDEX
- 参加者で紡ぐストーリー
- 五感に響くリアルな体験
- コスプレでさらに臨場感
「体験型エンターテインメント(エンタメ)」と呼ばれる新しい娯楽が人気を集めている。現実の場所に架空の物語や謎を設定し、実際に足を運んで楽しむ遊びだ。
参加者で紡ぐストーリー
「あなたは今日の昼、どこにいましたか?」「私にはアリバイがあります」
福岡市中央区の専門店「Hello Hello Mystery(ハローハローミステリー)」の一室で、7人が台本を手に会話を交わしていた。
7人が参加しているのは「マーダーミステリー」と呼ばれる推理ゲーム。この日は「森に死体があった」との設定で、参加者には「パン屋の息子」「内気な少女」といった役が割り振られ、各人物の背景や事件時の行動を記した台本も渡された。
参加者は台本を基に役を演じ、互いに質問したり自分のアリバイを説明したりしながら、誰が殺人犯役かを数時間かけて捜す。常連客の阿部敦司さん(35)は「役になりきって皆と物語を作り上げるのが楽しい」と声を弾ませた。
専門誌「マーダーミステリーマガジン」の編集長三原飛雄馬(ひゅうま)さん(41)によると、中国には4万5000店以上の専門店があり、市場は3000億円規模とも言われる。日本には2020年頃から登場し、遊べる店は現在約40店、約1000本の物語設定が流通。「ファンタジー」や「ホラー」などの趣向もあり、1ゲーム1人3000~6000円ほどで楽しめる。
単発イベントも各地で行われており、6月に平成筑豊鉄道の車両を貸し切ったイベント「炭坑の残り灯」には、埋蔵金を巡る殺人事件の設定に約40人が参加。8割が県外からで、担当者は「若い人が来るきっかけになり、地域活性化につながるのでは」と期待する。今冬に再演予定だ。
五感に響くリアルな体験
体験型エンタメには、様々なバリエーションがある。
福岡市中央区の「ホテルニューオータニ博多」は、宿泊プラン「白亜の迷宮へのチェックインFile No.2」を9月30日まで提供している。宿泊客は探偵役となり、客室や館内各所にちりばめられた情報を基に博多ラーメンを巡る事件の謎を解く。1人1泊2万2000円から。
北九州市では、人気アニメとコラボした「名探偵コナン 関門海峡ミステリーツアー」を来年2月まで実施中だ。同市内や山口県下関市にある6か所のチェックポイントを巡りながら、老舗ふぐ料亭の家宝の鍋を盗んだ犯人を見つける。JR切符「関門海峡ミニぐるりんパス」などを購入することで参加できる。
体験型エンタメに詳しい福岡市のゲームデザイナー石川淳一さん(59)は、五感に訴えるようなリアルな体験を求める傾向が、コロナ禍による行動制限で一層強まっていると指摘する。「『そこでしかできない』『自分だけのオリジナル』であることを重視する流れは、コロナ収束後にさらに加速するのでは」と分析する。
コスプレでさらに臨場感
コスプレの要素を加えた「ライブアクションロールプレイング(LARP)」もある。参加者は仮装し、「宝箱を見つける」「武器を使って戦う」など様々な設定を楽しむ。魔女がいる世界で呪文を唱えたり、中世の酒場で食事をしたりする設定もあるそうだ。
LARPをする団体でつくる「九州LARP連合」によると県内にも3団体あり、参加者は年々増加。同連合代表の増田浩宗(ひろのり)さん(51)は「いわゆる『ごっこ遊び』。ゲームの中でしかできなかったことを実現できます」と話す。
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