生活スタイルに合わせて「農体験」 暮らし豊かに都市部でも注目

ららぽーと福岡で収穫したナスやオクラを手に「野菜の成長を見に来るのが楽しみ」と話す夫婦

記事 INDEX

  • 農を気軽に楽しむシェア畑
  • コロナを契機に関心高まり
  • ツアーや農泊で農作業体験

 農作業をより気軽に楽しむためのサービスが広がっている。経験がない人や忙しい人でも、自分のライフスタイルに合わせて、野菜の成長を見守るワクワク感や収穫の喜びを味わうことができる。

農を気軽に楽しむシェア畑

 8月下旬、福岡市博多区の大型商業施設「ららぽーと福岡」の3階屋外スペースで、ナスやトマトが実っていた。昨年4月に開設されたサポート付き貸し農園「シェア畑」。クワや防虫ネット、支柱などの道具は全て借りることができ、年間15品目以上の種や苗も用意されている。栽培は無農薬で、作業に関する疑問を常駐する「菜園アドバイザー」に相談し、畑に来られない時は別料金で世話をスタッフに任せることも可能だ。


手ぶらで農作業を楽しめる「シェア畑」

 利用者のほとんどが初心者で、買い物ついでに農作業をする親子、「畑仕事に癒やされたい」と仕事帰りに立ち寄る20~30歳代の会社員もいる。週末に通う夫婦は「自宅ベランダではうまくいかなかったが、ここで指導を受けてうまく栽培できた。自分で育てた野菜は格別」と笑顔を見せた。


大型商業施設のシェア畑で実を付けるナス


 約1200平方メートルの敷地に140区画設けられ、利用料は月6900円から(別に入会金が必要)。運営するアグリメディア(東京)が首都圏を中心に約140か所で展開し、担当マネジャーの松本卓也さんは「農を気軽に楽しめます」と力を込めた。


コロナを契機に関心高まり

 コロナ下で屋外でのレジャーに人気が集まり、農作業も注目されている。千葉商科大の小口広太准教授(地域社会学)によると、市民農園の新規利用者や農家を支援する「援農ボランティア」の登録者が増加。「健康志向や食の安全への関心から農業に興味のある人たちが、コロナを契機に一歩踏み出した。持続可能な社会を目指す機運も高まる中、都市部でも農業が暮らしを豊かにする手段として根付きつつあるのでは」と指摘する。


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ツアーや農泊で農作業体験

 福岡市の観光関連会社「グローカルプロジェクト」は、「ファムニック」と称したツアーを2021年から展開している。「ファーム(農園)」と「ピクニック」の造語で、3時間ほどのツアーでは作付け作業を体験し、収穫した野菜をその場で調理して食べる。40~50歳代の女性の参加が多く、リピーターも多いという。


落花生を収穫したファムニックツアーの様子(グローカルプロジェクト提供)


 農場は同市西区の北崎地区で、農薬や化学肥料を使わない農業に取り組む団体「北崎未来を創る会」が農作業を指導。同社代表の河崎靖伸さんは「収穫体験だけだと物足りず、貸し農園はハードルが高いと思う人々に好評」と説明する。10月28日の参加者を募集中で、同15日には福岡県みやこ町で茶摘み体験ツアーも初開催する予定だ。


 福岡市西区の「かなたけの里公園」には田畑や果樹園があり、昨年11月にはキャンプをしながら収穫を楽しめる「CO_YARD KANATAKE」がオープンした。


かなたけの里公園に新しくできた「CO_YARD KANATAKE」


 これからの季節はサツマイモや里芋の収穫シーズンで、キャンプをしながらとれたての野菜でバーベキューをしてもいい。松本和也所長は「里山の生活を日常に取り入れ、農に親しむきっかけになればうれしい」と話した。


農体験ができる公園内に設けられたキャンプ場(かなたけの里公園提供)

サツマイモの収穫体験もできる(かなたけの里公園提供)


 農家に宿泊して地域の食や文化を楽しむ「農泊」も、気軽に農作業を体験できるとして人気だ。福岡県内では、豊前市や大刀洗町など約20市町村で受け入れており、県が運営するポータルサイト「農泊ふくおか」で各地域の特色や体験内容を紹介している。


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