主役に輝く「いなり寿司」 専門店の登場やSNS映えで脚光

福岡県内で販売されているいなり寿司

記事 INDEX

  • カラフルな包装で人気
  • 発展の可能性を秘める
  • スイーツ風のいなりも

 「握り」や「ちらし」に比べると地味ないなり寿司(ずし)。うどんやそばの「お供」などの脇役に甘んじていたが、近頃は専門店が登場するなど、主役として輝いているようだ。

カラフルな包装で人気

 福岡市中央区の「CANDY INARI  brun(キャンディーイナリブラン)」は2021年10月にオープンした専門店で、いなりを赤や緑のカラフルな紙で一つずつ包んで販売している。キャンディーのように両端をキュッとねじった姿が人気で、味も「梅ひじき」(194円)、「玉子焼き」(216円)など常時約10種類が並ぶ。


キャンディーイナリブランのいなり。カラフルな紙で包装されている

 店代表の樋口りつさんはブライダル会社の経営者でもあり、新型コロナウイルスの影響で挙式プロデュースの仕事がなくなった時期、「老若男女が好きで、常温で持ち歩ける」といなりに着目したという。

 差し入れやお土産としても人気で、1日100個ほどを販売。常連客の女性は「かわいくておいしく、何個でも食べられる」と笑顔で商品を選んでいた。


キャンディーイナリブランでカラフルな包装のいなりを選ぶ来店客


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発展の可能性を秘める

 16年に発足した全日本いなり寿司協会(東京)の理事で「いなり王子」として活動する坂梨カズさんによると、いなり寿司が文献に登場するのは江戸時代後期で、幕府がぜいたくな江戸前寿司を禁止した際に全国に広まった。

 地味ないなりに大きな変化が起きたのは17年頃で、しゃりの上に様々な具材をのせる「オープンタイプ」が、SNS映えすると脚光を浴びた。坂梨さんの調査によると、1個当たりの平均的な重さはかつては約45グラムだったが、「多くの種類を食べてほしい」との店側の思惑から、現在は約35グラムと小ぶりに。坂梨さんは「いなりは今や立派な主役。さらに発展する可能性も秘めている」と力を込める。

スイーツ風のいなりも

 21年に開店した福岡県飯塚市の「うまいなり」もオープンタイプを販売。一口サイズのいなりに、ベーコンも入った洋風の「ひじき」(130円)、ステーキソースで味付けした「国産牛」(150円)などのおかずをのせている。代表の其田寿枝さんは民生委員としても活動する。いなりを小さめにして価格を抑えたのは、「高齢者に複数食べて、様々な栄養を取ってほしい」との思いを込めたためという。


うまいなりのおかずがのったいなり

 福岡市早良区の「はなといなり」は、明太子や梅しそ、レモンしょうがなど5種類を詰め合わせた「セレクトボックス」(700円)を販売する。店主の実家はすし店で、10年前に閉店。会社員として働いていたが、「大好きな味を残したい」との思いが募り、ドライフラワーのブーケや髪飾りをネット販売していたフラワーデザイナーの妻とともに、22年4月に店をオープンした。店には妻のアトリエが併設され、夫婦は「いなりとドライフラワーのコラボレーションを楽しんで」とほほえむ。


はなといなりのセレクトボックス

 久留米市の「DECOSUSHI(デコスシ)」はスイーツに見立てたいなりをそろえる。クレープのような形の「デコいなり」(250円など)は、片手で食べられるようにと専務の堀江光代さんが考案。サーモンやホタテをのせた「いなりのたると」(5個1700円)、好みの大きさにカットできる「いなりのロール」(1450円など)もある。


デコスシの(左下から時計回りに)「デコいなり」、「いなりのたると」、「いなりのロール」

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