楽器や弁当箱に 森の貴重な資源「間伐材」を暮らしに生かす

間伐材を使った曲げわっぱの弁当箱

記事 INDEX

  • 森のことを知ってほしい
  • 水害を目の当たりにして
  • 庁舎内にも木の温かみを

 森林整備の一環で出る間伐材。貴重な資源として生かし、環境保全や防災について知ってもらおうと、楽器や弁当箱などに生まれ変わらせる動きが福岡県内で広がっている。

森のことを知ってほしい

 6月上旬、糸島市の山あいで、ヒノキの間伐材で作られたギターの一種「ブンネ」と、スギの間伐材を使い、椅子のように座って演奏する打楽器「カホン」の軽やかな音色が聞こえてきた。

 間伐材とは、人工林の過密を避けるため間引きされた木のこと。県林業振興課によると、土砂崩れを防ぐためにも必要な作業だが、生育が不十分な木が間伐されることがあり、市場でのニーズが低いという。


間伐材でできたブンネを演奏する福田さん(右)と、カホンをたたく薦田さん

 「モクコモ」の名で活動する同市の木工作家、薦田雄一さん(54)は間伐の仕事に携わる中で間伐材が活用されていない現状を知った。「木を切る、作品を作る、どちらもすることで森林を守りたい」と、家具などの製作に利用。2017年からは同市で音楽スタジオ「Green chord(グリーンコード)」を営む福田亮祐さん(38)とともに、楽器づくりに取り組む。

 ブンネはスウェーデン発祥で、弦が4本。赤いレバーを左右に倒すだけで簡単にコードが変わり、障害がある人や高齢者などでも使いやすい。手づくりで、県外産を使うが、今後は糸島産を取り入れる準備を進めている。

 2人は楽器づくりのワークショップを定期的に開き、森林の仕組みや間伐の大切さを説明している。7月28日に行う次回の参加者を募っていて、ブンネとカホンの体験もできる。薦田さんは「間伐材に新たな命を吹き込み、多くの人に楽しみながら森のことを知ってもらいたい」と話す。


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水害を目の当たりにして

 久留米市の企業「イマムラ・スマイル・コーポレーション」は10年ほど前から、スギの間伐材を使った曲げわっぱの弁当箱を手がけている。


スギの間伐材を使った弁当箱を紹介する今村さん

 同社は、食品用の折り箱などを作っている。度重なる筑後地方の水害を目の当たりにしてきた会長の今村智幸さん(59)が、森林を管理する大切さを感じ、開発を決めた。

 「スギは殺菌に優れており、弁当箱に向いている。物としては小さいので微力ではあるけれど、少しでも環境に貢献できれば」と今村さん。円形やハート形、絵柄をプリントしたものなど多くの種類があり、税込み5060円から。

 木の良さを生かした商品づくりに取り組む福岡市の「kinoaru(きのある)」は、ペット用のフードボウルを、22年から販売。実家がかつて製材所だった代表の江口由香さんが、「建材としてのニーズが少ない間伐材を活用したい」と考案した。ヒノキの幹の内部をくりぬいて磨き上げ、小石原焼のボウルを載せた。


江口さんが手がけるペットフードボウル


 木を加工しすぎず自然のまま使いたいと木肌の節やソリなども残しており、「一本一本の個性を楽しんでもらえたら」と願う。税込み1万1000円。

庁舎内にも木の温かみを


油山の間伐材が使われている南区役所の子育て支援課(福岡市提供)

 油山があり、面積の3分の1を森林が占める福岡市は、区庁舎や公民館の内装などを木材で仕上げる「木質化」に間伐材を用いている。市民からは「温かみがある」と好評という。

 南区役所の子育て支援課には、油山の間伐材を窓口や相談ブースに利用。市森づくり推進課は「身近に森林資源があることを知ってもらいたい。今後も活用していく」としている。

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