「耕作放棄地」を活用して地域を元気に!新作物で広がる可能性
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記事 INDEX
- レモンに希望を託す
- オリーブ畑に”変身”
- コーヒー栽培に挑戦
高齢化などに伴い手入れされなくなった耕作放棄地。新たな作物を育てて活性化を目指そうと、福岡県内で地域の人たちが奮闘している。
【耕作放棄地の問題】
農林水産省が毎年行う調査では、福岡県内の再生利用が困難なほど荒廃した土地や遊休地などの面積は4200~5100ヘクタールで推移している。背景には、所有者の死亡や高齢化、家族が遠方に暮らして手入れできない、山間地など条件の厳しい土地が多い――といった様々な事情がある。県は2022年度から、耕作放棄地を農地として活用しようとする事業者に対し、10アールあたり8万3000円を国と補助する事業を始めた。22、23年度には、宗像、久留米など4市の計1.6ヘクタールで、草取りや土壌の再整備費に充てられた。
レモンに希望を託す
「手間はかかっても、子どものようにかわいいね」。福智町上野の福智山の麓に広がる「あがのレモンクラブ」のレモン畑。猟師の平野八十八(やそはち)さん(78)と、ともに取り組むキャンプ場経営日高将博さん(39)が無農薬で育てる実の成育に目を細めた。
平野さんは、かつての畑にやぶが生い茂りイノシシの寝床になっている状況を目の当たりにして一念発起。2018年から重機で整備を始め、これまでに約2ヘクタールで苗木約1000本を植えた。
国産レモンを取り入れたのは、希少価値があり収益が期待できたから。23年は約3万個がなり、12月に初めて開いた収穫祭には約150人が訪れた。粉末化したレモンを混ぜた塩(800円から)とジャム(850円から)をインスタグラムを通じて販売。オーナー(年会費1万5000円から)や、苗木の手入れをするボランティアを募っている。
24年は、前年の3倍の収穫を見込む。クラブのNPO法人化を目指す平野さんは「元気なお年寄りも多く、働く場があれば生きがいにもなる。上野に活気を取り戻したい」と意気込む。
同町の洋菓子店「チョコロファム」ではレモンを使った期間限定のシフォンケーキ(300円)が連日完売したといい、代表の世良栄作さん(52)は「レモンは濃厚な味わいで、シフォンケーキとも相性がいい。何度も買いに来るお客さんもいて、今後は定期的に販売したい」と話す。
オリーブ畑に”変身”
ほかにも、放棄地の活用は各地で広がっている。
一般社団法人・九州オリーブ普及協会(福岡市)では、約80団体・個人の会員のうち、8割が耕作放棄地で栽培に取り組む。高齢となった土地の所有者から比較的安く借りられたり、行政の補助が得られれば整備費用を抑えられたりするためだ。
元福岡市職員の60歳代の男性は、糸島市の旧ミカン畑約60アールで育てている。高齢者や障害者を招いて、草取りや収穫を体験してもらいたいと思い描く。
協会は、オイルとして販売(2700円から)。寒暖差が小さく雨が多い気候から、マイルドになるという。
コーヒー栽培に挑戦
産業廃棄物のリサイクルを手がける大坪GSI(柳川市)は、「循環型社会」を目指す中で農業に着目。みやま市山川町にあるリサイクル工場そばの放棄地を活用し、九州ではあまり栽培されていないコーヒーに挑戦することにした。
19年から、リサイクルガラスから作る自社の人工軽石を混ぜて土壌の水はけを改良しながら約2ヘクタールの整備を始め、21年に「晴れのまち農園」をオープン。苗木150本を管理する。24年5月までの半年間、木のオーナーを募集するとすぐに定員が埋まった。オーナー限定のイベントや住民向けのマルシェ(市場)を開き、担当者は「住民が集う場に生まれ変わらせるという目標に近づいてきた」と手応えを語る。
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