福岡・千代でクラフトビール 「あすなろブルワリー」がつくる社交の場

記事 INDEX

  • ドイツでの留学体験
  • 大手航空会社を辞め醸造家に
  • 福岡・千代に「まちのブルワリー」

 小さなビール醸造所を併設するパブが福岡県庁のそばにある。「あすなろブルワリー」(福岡市博多区千代4-6-3)は、ドイツで修業したビール醸造家の村井真吾さんが2018年11月にオープンした。地域に根ざし、貢献できる交流拠点を目指すという。村井さんに話を聞いた。


村井真吾さん

1985年生まれ。大分県中津市出身。県立高校在学中にドイツに留学。大学卒業後は国内企業を経てエミレーツ航空に入社。退職後、2018年11月にあすなろブルワリーをオープン。


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客室乗務員から醸造家へ

 福岡市地下鉄・千代県庁口駅を降りてすぐ、千代東公園の裏手にあすなろブルワリーはある。カウンターと二つのテーブル席だけの小さなパブだ。しかし、ここはブルワリー(ビール醸造所)を名乗る。醸造用のステンレス製タンクが、カウンター左側のガラス越しに鎮座している。客はそれを横目にグラスを傾ける。


ドイツでの体験について語る村井さん

 大分県中津市出身。高校在学時にドイツに留学。帰国後の日本で感じたカルチャーショックで、大学に進学しても日本人より外国人と過ごす時間が多かった。

 大学卒業後に国内企業に就職したが、いわゆる"日本式"の社風が合わなかった。上司とも反りが合わず、航空大手「エミレーツ航空」(アラブ首長国連邦)に転職した。23歳でドバイに移住し、客室乗務員として8年間で100か国以上を飛び回った。同僚と各地のバーやパブでビールの味を覚えた。


エミレーツ航空勤務時代の村井さん(本人提供)

 仕事は充実していたが、少しずつ、新たなことにチャレンジしたくなった。エミレーツ航空を辞め、たまたま手に取ったビール造りの本に興味を持った。50軒ほどのドイツの醸造所に、修業をさせてほしいと頼んだ。オーガニックの原材料を使うバイエルン州の田舎にある醸造所が返事をくれた。そこで半年間、自家醸造の基礎を教わった。さらに週末は醸造マイスターの家を訪れ、試験醸造したビールをたらふく飲みながら、素材選びや温度管理といったノウハウを覚えた。


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理想を求めて福岡・千代に


夕方のオープン直後から客が集まりだす

 帰国後、福岡に店を構えた。千代を選んだのは、競争の激しい天神地区よりも地域に腰を下ろして貢献できると考えたからだ。ほとんどの客が千代の界隈から訪れる店は、「地域の社交場が理想だった」と語る村井さんが思い描いた姿だ。

 近くにある県庁や大学病院に勤める客のほか、楽しげに会話をしながらグラスを傾ける外国人の姿も目立つ。「7割ぐらいが外国人のときもある」そうだ。


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「まちのブルワリー」になりたい


店内にある醸造タンク

 「ちよエール」「ちよIPA」「ちよクロ」。地名を冠した「ちよ」シリーズが店の看板だ。醸造ごとに味は微妙に変化する。ただ、客はその揺らぎを楽しみにしている。常に同じにはならない個性が魅力で、「今回は少しかんきつの香りが強いね」などと、客との会話も弾む。

 そして、お酒はたしなむが"日本式"の大衆ビールが苦手という若い人でも、あすなろブルワリーのビールは、微炭酸で個性的な香りや風味が楽しめて飲みやすい。


飲み比べセットは様々な味が楽しめる

 「お客さんとのいろんな出会いがあって、毎日のように新しい発見がある。店をやって良かった。地元『ちよ』に貢献できるよう、公民館のような地域の交流の場にしていきたい」。村井さんが言う「まちのブルワリー」だ。


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福岡でも広がるクラフトビール

 小規模醸造所が手がける「クラフトビール」の人気は全国でも高まっている。値段は高いが、個性的な香りや苦みが世代を超えて支持を集めている。小型タンクが普及し、パブを併設した町の小さな醸造所も増えている。消費が低迷するビール市場の拡大を目指し、大手メーカーも参入してブームに拍車をかけている。

 クラフトビールとは、大手メーカーの量産品ではなく、少量生産のビールを指すことが多い。1994年の酒税法改正にともない、製造量の基準が引き下げられ、小規模でもビール製造ができるようになった。当時は「地ビール」と呼ばれて注目されたが、その後ブームは下火に。近年はクラフトビールと名を変え、勢いを盛り返している。

 福岡県内のクラフトビールは、ホテルオークラ福岡(福岡市博多区)の「博多ドラフト」、ケイズブルーイングカンパニー(福岡市城南区)の「ブルーマスター」、門司港レトロビール(北九州市門司区)の「門司港地ビール」などがある。


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