新麦解禁!パンや麺…香り豊かな"旬"の国産小麦を味わおう!!
新麦で作る予定のパンを手にする「マツパン」の松岡さん
パンや麺、菓子などの原料として欠かせない小麦。新茶や新そばなどと同様に、その年に収穫してすぐに製粉した国産小麦を「新麦」として旬の時期に味わってもらう取り組みが広がっている。九州は北海道に次ぐ一大産地で、各地のパン店や製粉業者などが新麦を使った新商品の開発に乗り出している。
「麦本来の風味がある」
7月下旬、福岡市中央区のパン店「マツパン」を訪れると、大きな字で「新麦解禁」と書かれたポスターが目に飛び込んできた。全国の小麦生産者や製粉会社、飲食店などでつくるNPO法人「新麦コレクション」(さいたま市、会員数約350)が毎年、旬の国産小麦を味わってもらおうと解禁日を定めている。
2026年の解禁日は8月10日の九州を手始めに、10月にかけて列島を北上していく。マツパンでは解禁に合わせ、今年収穫された福岡県産の品種「チクゴイズミ」や、モチモチとした食感の九州産「モチハルカ」を使った6種類のパンを作り、10月上旬まで順次、販売する。値札には「新麦使用」の表記を入れる。
同法人九州支部のメンバーで店主の松岡裕嗣さん(40)は、パン作りの講習会や小麦産地を訪ねるツアーにも取り組む。「新麦のパンはみずみずしく香ばしい麦本来の風味がある」と話す。
産地の個性も楽しめる
新麦は風味が良い一方、一定期間熟成させた小麦と比べて生地がベタつきやすかったり、膨らみにくかったりして扱いが難しいとされる。しかし、近年、国産小麦の新品種開発や、素材にこだわったパン職人の技術の向上もあり、見直されてきているという。
同法人は、国産小麦に目を向けてもらおうと設立された。その年に収穫し、製粉して2か月以内のものを新麦と定義し、15年から新麦パンの販売会などを開いてきた。理事長の池田浩明さん(56)は「産地ごとに個性がある。生産者や製粉会社、パン職人、消費者がつながり、国産小麦のおいしさや素晴らしさを伝えたい」と意気込む。
熊本県菊池市の「ろのわ」は、小麦の生産と製粉を手がける。20ヘクタールの畑でミナミノカオリとチクゴイズミの2品種を農薬や化学肥料を使わずに栽培している。専務の東将平さん(30)は「今年は天候に恵まれ、品質、収量とも良い出来だった。パンを通して生産現場にも思いを寄せてもらえたら」と話す。
熊本市の熊本製粉は、同県玉名市産の高たんぱくなミナミノカオリで作った小麦粉「Premium(プレミアム) T」を16年から販売する。同社の特設サイトで、県内で新麦を取り扱うパン店や菓子店を紹介している。
今回の熊本地震では両社とも大きな被害はなく、新麦の商品が出荷できたという。
小麦で深まる地域の絆
福岡県うきは市では、古くから筑後川流域の肥沃(ひよく)な大地で小麦が作られてきた。しかし、地元で使われる小麦は外国産が多く、地産地消を進めようと、生産者や市、企業などが連携して、21年に「うきは『小麦』活性化プロジェクト」を始めた。
種まきや麦踏み、収穫の体験イベントを開くほか、地元の浮羽究真館高の「小麦プロジェクト部」や飲食店と協力し、小麦を使った菓子や新メニューの開発にも取り組む。24年には、地元産の小麦粉を「うきはん小麦」として商標登録した。
同プロジェクトの松尾潤一代表(57)は「良質な小麦がある歴史や風土を知ることで、郷土に誇りを持ってもらえたら。全国に発信し、地域活性化にもつなげたい」と話している。
■ 国産小麦 高まる需要
2025年の小麦の収穫量は約103万トンで、24年度の自給率は16%。国は30年度にそれぞれ108万トンと19%に増やす目標を掲げる。九州の25年の収穫量は約14万トンで、福岡、佐賀、熊本の順で多く、ラーメンやちゃんぽん麺用など各県で開発された品種もある。
九州農政局によると、小麦の栽培は乾燥地帯が適しているため、収穫期が梅雨と重なる九州は北海道に比べて栽培が難しく、収穫量が安定しないなどの課題があるという。担当者は「海外情勢の不安定化で国産小麦の需要は高まっている。防湿やカビ予防の対策を呼びかけるなどして、安定した収量を確保できるようにしたい」と話す。







