身近な問題からSDGsを考えよう! 八幡高校の生徒の取り組みが大賞に
記事 INDEX
- ジェンダーを知るカルタ
- 育休のアンケートも実施
- 解決策を探る力を伸ばす
男女の格差や飢餓をなくし、誰もが安心して暮らせる世界を目指す「SDGs」の理念を教育に取り入れる試みが広がっています。まずは身近な問題に目を向け、解決策を探る力を身につけよう――。福岡県立八幡高校(北九州市)の生徒たちは男女平等を啓発するカルタを作るなどジェンダーをテーマに取り組みました。
<SDGs> 「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の略称で「エスディージーズ」と読む。貧困や飢餓、教育などの17項目について抜本的な改善を目指す国際目標で、2015年の国連総会で採択された。
ジェンダーを知るカルタ
『ママはかっこいい社長さん』
『女性でも活躍できる世の中に』
4月13日、昼休みの八幡高校。3年生の船井朱梨さんら生徒8人が、カルタを楽しんでいました。船井さんらが制作したもので、昨年11月には小学生に体験してもらうイベントも開きました。
八幡高では2020年度から、SDGsをテーマにした「総合的な探究の時間」を本格的に始めました。昨年度は普通科の2年生約200人が班ごとにテーマを決めて取り組み、船井さんらのグループは、体育祭で男子が応援団長を務める慣習に疑問を持ち、ジェンダーを巡る問題を選びました。
育休のアンケートも実施
地元の企業や学校で働く男女約200人に育児休暇に関するアンケートを行ったところ、「育休を取得しやすい職場環境か」との問いに6割が「いいえ」と回答。育休を取りにくい人がいる理由としては「同僚に迷惑がかかる」(69.8%)、「復職後の立場・地位が心配」(34.9%)などの声が目立ちました。
企業の担当者にも話を聞き、「育児は女性が行うもの」といった役割意識が女性の社会進出の壁になっていると分析。子どもの頃から意識を変えることが必要だと考え、小学生も楽しく学べるカルタを作りました。
さらに子どもが発熱したときなどに、職場の机やホワイトボードに掲示し、同僚らに帰宅したことを知らせる「ベビー イン ホーム」のステッカーも作り、福岡県内の3社に効果を検討してもらいました。
企業からは「社員同士で支え合う気持ちが育ちそう」といった好評価を得ました。ただ、子どものいない社員がストレスを感じる原因になったり、新たなハラスメントを誘発しないか心配したりする声もありました。
解決策を探る力を伸ばす
こうした成果を動画にまとめ、北九州市主催の高校生SDGs選手権大会に応募。3月末、「インターネットの表面的な情報のみに頼らず、エビデンス(証拠)を重ね、女性の社会進出を阻む要因と打開策を掘り下げた」(審査員)と大賞を受賞しました。
「いろいろな視点で解決策を探ることが大事だとわかりました」と船井さん。指導にあたった田所優果教諭は「SDGsの視点から身につけた社会の課題をつかむ力や、解決策を探る力をさらに伸ばしてほしい」と期待します。
一方で、業務の多い教員が指導の質をどう高めていくかが課題といい、「教え方にも結論にも正解はない。やりがいを感じる一方で、指導するスキルや知識を磨き続ける大変さはあります」と話しています。(写真:大野博昭)