福岡・大名の老舗ロシア料理店「ツンドラ」が5月7日で閉店
記事 INDEX
福岡市中央区大名の老舗ロシア料理店「ツンドラ」が、5月7日の営業を最後に店を閉じます。1960年の開店以来、名物の「ボルシチ」などが地元住民や買い物客らに愛されてきましたが、後継者がおらず、コロナ禍による売り上げ減もあり、61年の歴史に幕を下ろすことになりました。
61年の歴史に終止符
店の創業者はオーナーの徳永哲宥(てつひろ)さんの母、初美さん(2019年に死去)です。東京の専門店で食べたロシア料理に魅せられ、その店で修業。現在の天神3丁目に開店して72年、天神西通りに近い明治通り沿いの現在地に移転しました。
ロシアの伝統料理・ボルシチは、創業時からの看板メニューの一つ。トマトベースのスープに豚肉のほか、ビーツ、ジャガイモ、ニンジンなどの野菜が入ったこくのある味が人気で、缶詰商品も店や百貨店などで販売しています。ひき肉入りの揚げパン「ピロシキ」、キノコのつぼ焼き「グリバーミ」にも多くのファンがいます。
後継不在にコロナ禍・・・
徳永さんはウェーターや調理の経験を積んだ後、40歳代で2代目となって店を切り盛りしてきましたが、傘寿も近い年齢に。そんな中、料理長を長年務めていた親族が昨年他界し、後継ぎがいなくなりました。
さらにコロナ禍が続く中、営業時間短縮や座席数の削減で売り上げが落ち込んだこともあり、閉店を決意したといいます。
4月に入り、スタッフ12人に閉店を伝え、常連客らにも連絡を始めました。近くの新天町商店街で傘店を営む常連客の柴田嘉和さんは「街のランドマーク的な店なので消えるのはつらい」と悲しみます。
SNSでも閉店の情報が広まり、「ショック」「寂しい」「どこかに味を継いでほしい」と惜しむ声が上がっています。
ボルシチはレトルトで
徳永さんは「母の代から多くの人に愛されてきた店を畳むことになり、申し訳ない。支えてくれたお客さんに感謝し、最後まで心を込めて料理を出したい」と話します。ボルシチの缶詰は閉店後、レトルト加工に変えて販売を続ける予定だそうです。