異国で暮らす苦悩 北九州で開かれたベトナム式法要で流れた涙
記事 INDEX
- 北九州のお寺が始めた善意
- お経を上げながら涙するベトナム人も
- 法要が終われば車座で精進料理
北九州市八幡東区の永明寺で8月、ベトナム式の盆法要が営まれました。「お寺にお参りしたいけど、ベトナム式の寺院がない」。日本に暮らすベトナム人から相談された松崎智海住職が2017年、善意で始めました。今年で3年目を迎え、ベトナム人留学生や技能実習生など約200人が参列しました。日本に暮らすベトナム人は増えていますが、異国で暮らす外国人が抱える悩みや不安といった問題も垣間見えました。ふかぼり取材してきました。
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ベトナムにもお盆がある
永明寺は、西本願寺(京都市)を本山とする浄土真宗本願寺派の寺です。松崎さんによると、ベトナムでは夏季に先祖を供養する、いわゆる「お盆」を大切にするそうです。
盆法要を開くきっかけになったのは、北九州市内のベトナム料理店で働くベトナム人女性でした。「お参りする寺院がない」。女性から相談された松崎さんは、二つ返事で「うちのお寺でよければ」と応じました。参加しても数十人だろうと思っていた松崎さん。2017年に初めて開いた盆法要には、大型バス2台で約180人が参列し、驚いた松崎さんは翌年以降も続けることを決意しました。
ちょっと面白い文化の違いも発見しました。法要が始まる前、余興として参列者の歌や踊りがありました。ご本尊のあるお堂です。参列者はスマホで写真を撮り、お盆に親戚が集まっているようなアットホームな雰囲気でした。
ベトナム人僧侶の法話に涙も
法要では、この日のためにベトナムから来日した僧侶が読経し、法話をしました。なかには涙を流してお経を上げたり、法話を聞くベトナム人の姿もありました。
お経の内容を九州産業大学4年の留学生グエン・トアン・マンさんが解説してくれました。自分たちを育ててくれた両親への感謝の言葉が並んでおり、愛する両親と離れて暮らすベトナム人の心に届く内容だと教えてくれました。
日本に暮らす外国人が抱える苦悩
外国人労働者の受け入れを拡大する新在留資格「特定技能」が4月に導入されました。国内には技能実習生という名の「労働者」が30万人以上います。技能実習生の最大の派遣国が、ベトナムです。
永明寺に集まったベトナム人のほとんどが、二十歳前後の若者でした。異国の地で暮らす留学生や実習生が抱える苦悩もあるようです。実習先などで不当な扱いを受けたというベトナム人の声が、松崎さんにも届いているそうです。