北九州の魚町銀天街に昆虫食の自販機が登場 商店街組合と東京農大生らが協力

魚町銀天街の自販機に並ぶ昆虫食

記事 INDEX

  • 昆虫食を知るきっかけに
  • 学生ベンチャーが企画
  • 食糧問題への危機意識を

 自動販売機から出てくるのは、コオロギのスナックやタランチュラの素揚げ――。様々な昆虫食が並ぶ自販機が北九州市小倉北区の魚町銀天街に登場しました。事業に携わるのは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて取り組む地元商店街と、東京農業大の学生ら。世界的な食糧危機への懸念から昆虫食への需要は高まりつつあり、事業の関係者は「昆虫食を知るきっかけにしてもらいたい」と期待しています。

学生ベンチャーが企画

 自販機は、魚町銀天街の商店街振興組合と、東京農大の学生たちが設立し昆虫食の開発や普及活動を行っている会社「うつせみテクノ」(東京都渋谷区)が協力して、1月下旬に設置しました。

 同社の代表・秋山大知さん(21)は、同大で廃棄野菜を与えたコオロギからたんぱく質を生成する研究を行う佐々木豊教授の研究室に所属。秋山さんは昆虫食を販売する動きが広がりつつあることを知り、2019年末頃から佐々木教授らと団体を結成し、販売に向けて協議してきました。その中で「多くの人の目に触れて興味を持ってほしい」との思いから、自販機の設置を企画しました。


「うつせみテクノ」の公式サイト

 一方、SNSで昆虫食に関する情報発信をしていた秋山さんは、ツイッターを通じてSDGs関連の取り組みを積極的に行う魚町銀天街の店主とつながり、この商店街での設置を目指すことに。自販機の購入と設置は同社が担い、商店街側は自販機の運用を行うことになりました。

 事業を行うには、法人と取引するなどの必要があることから、秋山さんは団体の会社化を決め、同大の学生1人と佐々木教授との計3人で2020年4月に「うつせみテクノ」を設立。北九州市での事業のほか、食用昆虫の生産技術に関する研究なども行っています。


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食糧問題への危機意識を

 自販機で扱う昆虫は、クモやコオロギのほか、バッタ、蚕、ミルワームなどで、そのままの姿で出てくる素揚げや粉末にしたドリップコーヒーなどがあります。値段は300~2000円。商品は、タイで養殖された昆虫を埼玉県の企業を通じて仕入れて開発しているほか、既製品も使用しています。


自販機で購入できるタランチュラを加工した食品

 売り上げの一部は商店街に還元し、会社の研究資金にも充てます。総事業費はおよそ100万円で、昨年4~6月にクラウドファンディングで約55万円を集めました。

 同社は今後、コオロギの成分を混ぜたスープなどの販売も計画しており、秋山さんは「販売を通じて食糧に対する危機意識を高めたい。東京など他都市でも自販機を設置していきたい」と話しています。

■未来食に世界が注目
 昆虫食は、国連食糧農業機関(FAO)が2013年、将来的な食糧難に陥った際の「未来の食料」と紹介したことで注目を集めた。
 18年には、欧州連合(EU)が昆虫を「新規食品」として承認するなど、世界的に関心が高まっている。調査会社の日本能率協会総合研究所(東京)は、昆虫食の世界市場規模が19年度の70億円から25年度には1000億円に拡大すると予測。国内でも商品開発が行われているほか、専門店なども出てきている。


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