コロナ禍で米ストロー事業に転換 脱プラ目指す福岡のベンチャー

UPayが製造、販売する米ストロー(提供:UPay)

記事 INDEX

  • 海外での売り上げが9割
  • 原料は米7割、コーンスターチ3割
  • 「脱プラの本気度が問われている」

 福岡市中央区の環境ベンチャー「UPay(ユーペイ)」が米由来のストローを製造、販売している。プラスチックを使用していないため、環境意識が高いアメリカやヨーロッパなどで販路を広げる一方、国内ではやや苦戦しているようだ。「国民の環境意識の違いもあるようだ」。米ストローを開発するにいたった経緯と脱プラスチックに向けた国内課題を聞いた。

海外での売り上げが9割

 2016年に創業した若い会社だが、ここまでの歩みは波乱万丈だ。当初は手作り雑貨の販売や飲食店事業を展開。電子決済の普及にともない、QRコードによる飲食店の注文システム開発に事業転換し、2019年には社名もユーペイに変更した。ただ、コロナ禍の直撃を受け、飲食店向けの事業は先行きが見通せなくなった。2020年からサステナブル事業に本格参入し、米ストローの開発、販売を開始した。


米を主原料に製造されるストロー(提供:UPay)

 2020年5月に国内販売を始めた米ストローは、アメリカやイギリス、ドイツ、ドバイなど海外での売り上げが9割を占め、システム開発業の収入を超えた。「欧米は政府も国民も環境意識が日本より高い」。ユーペイ取締役の上官家富さんは言う。プラスチック製より割高だが、環境に配慮した製品を選ぶ店舗は日本より多いという。コストの影響を受けやすい小規模な店であっても、この傾向は変わらないと語る。

 「コストも敬遠される理由の一つだろうが、日本人は新たな価値観やモノを受け入れるのに時間がかかる。その一方で、周りが使っているのを見ると『じゃあうちも』となりやすい」。利用者が負担するコストはプラスチック製だと1本あたり約1円、米ストローになると約7円に増す。


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原料は米7割、コーンスターチ3割


米ストローは食べても安全なことをアピールしている(提供:UPay)

 ユーペイの米ストローの原材料は米が7割、トウモロコシ由来のでんぷんが3割だ。質感はプラスチック製より硬く、厚みもある。乾燥したマカロニをストローサイズに長くしたような印象だ。「揚げたり、ゆでたりすれば食べることもできる」そうだ。

 ストローとして使用してみた。液体に浸している部分が少し軟らかくなるだけで、長時間使用しても、紙ストローと違って機能が損なわれることはない。着色料が溶け出すことも、飲み物の味が変わることもなかった。

春の規制強化を見据え

 今年4月、プラスチック製品への規制が強化される。政府はプラスチック資源循環促進法に基づき、利用者の多い小売店や飲食店などで提供されるプラスチック製ストローなど12製品の有料化や再利用の対策を義務づける。

 対象の12製品は、ストロー、スプーン、フォーク、ナイフ、マドラー、ヘアブラシ、クシ、カミソリ、歯ブラシ、シャワーキャップ、ハンガー、衣類用カバー。年間5トン以上使う事業者に対策が義務づけられ、飲食店やスーパー、コンビニ、ホテル、クリーニング店などが想定されている。

 事業者は消費者に利用の意思確認をした上で、有料化、受け取らない客へのポイント還元、繰り返し使える製品の提供、回収して再利用、代替素材への転換といった対策を求められる。


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「脱プラの本気度が問われている」


「脱プラの本気度が問われている」と語る上官さん

 ユーペイは2月、福岡県内に新工場を稼働させる。中国で操業している工場と合わせて2拠点体制となる。

 「日本市場は伸びしろがあると考えている。まだ反応が良くないからと、海外に販路を集中したくはない。環境に優しいという価値は必ず分かってもらえる」

 ただ上官さんは、こうも付け加える。

 「脱プラスチックを推進するためには、政策も大事。日本の本気度が問われている。海外は政府が本気になって脱プラスチックを推し進めている」

 ユーペイはストローに続き、スプーンやフォーク、弁当箱などの商品開発を進めている。早ければ来年度に商品化されるという。日本国内では米余りの状況が続き、コロナ禍による外食離れで米の需要低下も進んでいる。ユーペイは市場に出回らない過剰米も活用したいと明かす。

 「まずは米ストローを使ってもらうのが第一歩。少しずつ根付かせていきたい。子どもたちの世代により良い地球環境を残すためにも、自分たちの世代が環境問題にきちんと取り組まねばならない」


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