「おしし、しっとーと?」修理した獅子頭が福岡市博物館に大集合〜後編・展示&体験
記事 INDEX
- 修理ビフォーアフター展示
- おしし「お泊まり」体験
- 「みんぱく」研究者トークも
福岡市内に伝わる疫病退散の行事「祓(はら)い獅子」。各地域で用いる獅子頭の一斉修理を記念する展示・関連イベント「おしし、しっとーと?〜福岡市の祓い獅子行事~」が3月15日から福岡市博物館(早良区百道浜)で開催されます。その見どころを紹介します。
【前編・現場見学会】はこちら
修理ビフォーアフター展示
福岡市登録無形民俗文化財である夏の疫病退散行事「祓い獅子」。この行事に用いる獅子頭はそれぞれに損傷が見られるため、文化庁の補助を受けて14体の修理が行われました。完成記念として、市博物館の体験学習室(みたいけんラボ)で獅子頭の展示とイベントが行われます。
修理された獅子頭(紺屋町子供獅子祭、高宮八幡宮獅子まつり、紅葉八幡宮獅子まつり、姪浜の獅子まわし、姪浜東町事代神社の獅子まわり、東入部中通の獅子まわし)と、修理の必要がない状態のよい獅子頭と併せて約20体が会期中に勢ぞろいします。
きれいになった獅子頭をお披露目するとともに、どの部分をどのように修理したのかを解説する「ビフォーアフター」の写真や、箱など関連用具の展示も行われます。展示・イベントを企画した福岡市文化財活用課の荒川真希さんは「祓い獅子行事を広く市民に知ってもらうことも、この修理事業の大きな目的です」と語ります。
市内で祓い獅子を行う保存会の間ではこれまで、横の交流があまりなかったそうです。後継者不足はどの地域にも共通する課題で、次世代に関心を持ってもらうためのアイデアを交わすなど、「この場をきっかけに、保存会同士のつながりが生まれたらうれしいですね」と荒川さんは期待を寄せます。
おしし「お泊まり」体験
福岡市内で祓い獅子行事を行う地域の中でも4か所にしかないのが、「お泊まり」という珍しい習俗。獅子頭を町内の家々で一晩ずつ順番におまつりして、疫病退散を願うものです。
「獅子まつり」を行う紅葉八幡宮の氏子町内では、今も続いています。平山道宜(みちよし)禰宜は、「いいな、うちにも来てほしいなと願う気持ちから、隣から隣へ自然と伝わったのでは」と話します。他の保存会からは「そんな習わしがあるとは知らなかった」という声も聞かれました。
「おししを手で触って頭に担ぐことで、その重みや存在感、『はらう』という目には見えない不思議なパワーを子どもたちに味わってほしい」という荒川さんの強い思いから、子ども向けワークショップ「はらってまわる博物館〜お獅子パワーで疫病退散!」が、3月19日に開催(要予約)されます。
ワークショップでは、子どもたちが講師とともに獅子頭を担いでミュージアムショップや池の周りなど博物館の内外を練り歩いて、最後にみたいけんラボで獅子頭の「お泊まり」を体験。獅子頭に触るだけでなく、行事全体の雰囲気も味わえる絶好の機会です。
「みんぱく」研究者によるトークも!
同じく3月19日には、講演「家を廻(まわ)る獅子のパワーに迫る」(要予約)も行われます。講師の神野知恵(かみの・ちえ)さん(国立民族学博物館 特任助教・人文知コミュニケーター)は、西日本で現在も旅を続ける「伊勢大神楽」の研究をしています。
講演では、伊勢大神楽をはじめとする獅子舞行事や、各地で見られる「獅子頭が家々を廻(まわ)る」行事と福岡市の祓い獅子行事の比較について語られる予定です。
「暮らしのなかで生まれた祈りの行事がこれからも続くように」と願って実現した今回の展示とイベント。2年あまりに及ぶコロナ禍が収束するように願う私たちの心と、目に見えない災厄や魔を獅子の力で祓おうとした古の人々の心は相通じるはず。この展示やイベントにふれることで、獅子頭と行事に込められた祈りが聞こえてくるかもしれません。
<おしし、しっとーと?>
福岡市博物館(福岡市早良区百道浜3-1-1)※月曜休館
①展示「おしし大集合」
3月15日(火)〜4月3日(日)9:30〜17:30/1階 体験学習室(みたいけんラボ)
②子ども向けワークショップ「はらってまわる博物館〜お獅子パワーで疫病退散!」(要予約)
3月19日(土)10:00〜11:30
定員:小学生10名(兄弟児の同伴可)
③講演「家を廻る獅子のパワーに迫る」(要予約)
3月19日(土)14:00〜15:30
※②③の予約は3月9日(水)までに、公式サイトの応募フォームで