昭和の記憶とどめる北九州の成人映画館「小倉名画座」をカレー店主が承継
記事 INDEX
- 昭和にタイムスリップ
- 常連客に声をかけられ
- 新たな"接点"を求めて
北九州市の成人映画館「小倉名画座」が、カレー店を営む丸谷真一郎さん(34)に引き継がれました。約40年にわたって小倉の"路地裏文化"を紡いできた施設を守りつつ、若い世代にも訪れてもらえる場所になることを目指して奮闘しています。
昭和にタイムスリップ
名画座があるのは小倉北区京町の一角。JR小倉駅から歩いてすぐ、にぎやかな繁華街エリアから1本入った通りで、小さな居酒屋やスナック、ストリップ劇場などが軒を連ねます。昭和にタイムスリップしたような雰囲気がたちこめ、丸谷さんは「この通り一帯がノスタルジックな感じですよね」と語ります。
建物左手のドアから入る1階ではポルノ映画を上映。右側の階段を上った2階は九州唯一のゲイ映画専門館で、かつては男性によるショーも行われていたといいます。
常連客に声をかけられ
丸谷さんは民間企業での勤務などを経て、28歳の頃にカレーの移動販売を始めて独立。カレーを中心に飲食業を続けてきました。
名画座とのかかわりが生まれたのは3年ほど前。丸谷さんのカレーをよく食べに来ていた名画座の建物のオーナーに「経営者が引退する話があるからやってみないか」と声をかけられました。「そうそうある話じゃないし、おもしろそう」。様々な事業にチャレンジしたいとの好奇心もあり、時機をみて検討することにしたといいます。
その後しばらくは進展がなかったものの、昨年秋、経営者が正式に引退することに。話を改めて勧められ、事業承継を決意しました。
新たな"接点"を求めて
準備期間を経て、数人のスタッフとともに今年2月から新体制に移行。客は、昔なじみの男性がほとんどで、平日で30人、週末には60人ほど訪れるといいます。1回の上映は約1時間の作品の2本立て。1日に数回上映しますが、午前中から夕方まで館内で過ごす人もいるそうです。
「長年のお客さんとスタッフに助けられています。ここはある意味、完成されている業態なので、これまでやってきたことを大幅に変える必要はないと思っています」と丸谷さんは語ります。
一方で、事業を継続していくため、新たな視点による取り組みも始めています。映画館の無料見学会を2月中旬に行ったほか、3月19日にラブホテル研究家のトークライブ、20日にはフルートとアコースティックギターによるミニコンサートを開催しました。1階の入り口では、自らの経験をいかしたレトルトカレーも販売しています。
丸谷さんは「古いお客さんの感覚も守っていく必要があるので、営業時間外のイベントなどで新規の若い人に来てもらいたいです。ポルノに偏ることなく、この場所でいろんな人との接点が生まれれば」と、次の企画を練っています。