軒先にオレンジ色のアーチ みやこ町で進む干し柿づくり

農家の軒先に並ぶ干し柿。360度カメラで撮ると、オレンジ色のアーチのよう

 全方位を1枚の写真に収められる360度カメラで撮ると、オレンジ色のアーチが架かっているように見えた。福岡県みやこ町の勝山宮原地区で、干し柿づくりが進んでいる。農家の軒先にひもでつるされた渋柿が、甘いにおいを放っている。

今年も家族総出で一つ一つ

 干し柿づくりは、この時期の同地区の風物詩。盆地で寒暖差が大きい一帯では、山から吹き下ろす寒風を受けて、甘くて栄養のある干し柿ができるのだという。


ひもでつるした渋柿が並ぶ

 農業・柿野義実さん(80)宅では、1年で最もにぎやかな時期を迎えている。自宅そばの畑では、柿野さんの息子らも駆けつけて、大きなはしごで渋柿を収穫。一つずつ丁寧に皮をむき、10個単位でひもにくくりつける。家族総出ですべて手作業で行うのが毎年の恒例だ。


熟した柿

 今年は雨が少なく、暖かい日が続いたため、例年より半月ほど遅い11月中旬から収穫を始めた。約20本の木から4000個ほどの渋柿が採れたそうだ。


壁には干し柿の影

 木造2階建ての軒先に、約3週間にわたって干し、甘みを凝縮させる。「寒風にさらし、じっくりと水分を抜くことで、どんどん甘みが増します」と柿野さん。とろりとした食感が魅力だ。


甘みが滴となって

楽しみにしてくれる人がいる

 できた干し柿は12月半ば頃にかけて、みやこ町や行橋市のJA直売所などで販売されるという。柿野さんの干し柿のおいしさを知っている”常連客”の中には、待ちきれずに自宅まで買い求めに訪れる人もいるそうだ。


柿野さんの眼鏡に映る干し柿の列

 ここ数年は「体がうまく動かんようになった」と話す柿野さん。追い打ちをかけるように、サルによる被害に悩まされているという。

 「サルは甘さをよう分かっとるね。賢いから往生するよ」。多いときには20~30匹の集団で行動する。一か所にとどまらず、移動しながら干し柿が熟したころを見計らったように”収穫”していく。ひもごと両手に抱えて山に逃げ帰るという。「サルに取られてしまうから」と、干し柿づくりを止めてしまった農家もあるそうだ。


周囲にはのどかな田園風景が広がる

 役場に相談したところ、ロケット花火を持ってきて対応してくれた。しかし、「その時は逃げるけれど、何も変わらん」と嘆く。


「元気なうちは続けますよ」と柿野さん。妻の洋子さんと

 それでも、「農業をしているから夫婦とも元気だし、楽しみにしてくれる人もいるからね」と柿野さん。「いつまでできるか分からんけれど、元気なうちは続けますよ」と笑顔を見せた。



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