夜の空港をロボットで表現 有明高専がロボコンでデザイン賞
記事 INDEX
- 今回のお題は「紙飛行機」
- ロマンとこだわりで勝負!
- 飛ばす過程が「デザイン」
誘導灯の明かりに沿って紙飛行機がゆっくり進み、”夜空”に飛び立っていく――。福岡県大牟田市の有明高専ロボット研究部のチームが、2022年の「高専ロボコン」全国大会でデザイン賞を獲得しました。受賞したのは、夜の飛行場に見立てたロボットです。開発した学生に思いを聞きました。
「高専ロボコン」とは
高専に通う学生が、習得した知識や技術、発想力でロボットを作って成果を競い合う「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」(NHKなど主催)で、1988年に始まった。今年の地区大会は全国8か所で10月に行われ、11月27日に東京・国技館で全国大会が開催された。12月24日の15時5分から全国大会の模様がNHKで放送される予定。
今回のお題は「紙飛行機」
毎年変わるコンテストの内容。今回は「紙飛行機を飛ばす」でした。会場の離れた場所に置いた的に紙飛行機を着地させ、難易度に応じて点数を競います。柔らかな紙の素材をロボットが扱うには技術が必要で、想定通りに飛ばすのも難しいそうです。
大会では、連射機能を搭載したロボットが一度に大量の飛行機を放つ場面もありました。その中で、有明高専のロボットは異彩を放ちました。ロボットの上面を飛行機がゆっくりと移動し、1機ずつ順番に準備を整え、優雅に離陸していくのです。
試合時間は2分30秒で、飛行機の数に制限はありません。より多くの機体を飛ばした方が点数を稼げ、有利になるルールのはずですが……。
ロマンとこだわりで勝負!
デザイン賞を受けたのは、有明高専ロボット研究部の「AppRoachIng(アプローチング)」のチーム。夜の空港を表現したロボットです。
「飛行機は飛び立つ瞬間が一番ワクワクするんです。それを表現できたら、きっと面白いロボットになると思いました」。チームリーダーで創造工学科4年の近藤瑞起さん(19)が、今回のロボットにかけた思いを話してくれました。
製作したロボットは、無線コントローラーの操作によって、格納スペースから紙飛行機が順に送り出される仕組みです。誘導路を進んだ先に、ローラーが回転する発射装置があり、ここから1機ずつ飛び立ちます。
誘導灯の明かり
紙飛行機は誘導路と滑走路を経由して、発射装置にたどり着きます。「LEDの灯火に注目してください。この光があるから滑走路だと分かり、美しさを表現できたのかなと思います」と近藤さん。実際の空港でパイロットに進路を知らせる誘導灯をLEDの光で再現しました。
LEDは、誘導路の中心に並ぶ緑、端を示す青に色を分け、細部にもこだわりました。一つずつ手作業ではんだ付けしており、カーブの部分も光のラインがきれいに浮かび上がります。
リアルな動き
紙飛行機を移動させる仕組みは、紙飛行機を支える台と、ロボット内部に取り付けたベルトに強力な磁石をつけて一緒に動かすことで実現しました。モーターでベルトが動き、紙飛行機が自力で移動しているように見えます。格納スペースから送り出される紙飛行機を、定められた位置に正確に動かす制御には苦労したそうです。
配線はシンプルに
全国大会の直前まで改良を重ねました。元々、ロボットの外枠に沿って張り巡らせていた配線をシンプルな設計に修正したそうです。全国大会は会場規模が大きく、番組の収録なども行います。会場にはさまざまな機械が集まるため、別の機器が発する電波などで誤作動が起きないよう、入念に対策を施しました。
飛ばす過程が「デザイン」
紙飛行機を目標地点に着地させるコンテスト――。その点だけでは、有明高専のロボットは、地区大会は予選落ち、全国大会でも1回戦敗退の成績でした。しかし、学生らの思いの詰まったロボットは、観客や審査員を魅了して会場を沸かせたのです。
「得点をたくさん狙うことを考えると、ロボットの形や機能は似たようなものになってしまう」と近藤さん。「他校と違う色を出すためにも、ひと味違うものを作りたかった。みんな同じ思いで一貫して取り組んできました」と振り返ります。
有明高専は、夜の飛行場という発想力と、紙飛行機が飛び立つまでのストーリー性が評価されました。離陸準備から着陸までの一連の過程が「デザイン」として認められて、10年ぶりとなる全国大会へと進み、そこでも賞を勝ち取ったのです。
ロボコンは、ロボットの対戦だけで勝敗を決めるのではなく、アイデア対決の側面があります。近藤さんは「強豪校が集まる中、賞を頂けたのは本当にうれしい。見た目はもちろん、ロボットの機能的な美しさも評価してもらえた」と、仲間たちとつかんだ結果に満足しています。