顕微鏡で福岡の昔をのぞいてみた~ミクロの考古学展~
福岡市内で確認された出土品を「ミクロ」の世界からとらえる企画展「ふくおか発掘図鑑10~ミクロの考古学~」が、福岡市博物館(福岡市早良区)で2020年1月19日(日)まで開かれています。福岡を深掘りする当サイトとしては外せない内容だと思い、会場で取材してきました。肉眼では見えない世界に、福岡の歴史ロマンが広がっていました。
福岡は発掘調査が多い
福岡市博物館では「ふくおか発掘図鑑」と銘打って、発掘調査の成果を発表する企画展を開催しており、今回はその10回目です。展示室には福岡市内で出土した約100点のほか、電子顕微鏡で拡大した解説パネルなどが並んでいます。出土品のほとんどは、福岡市埋蔵文化財センター(福岡市博多区)が所蔵しているものです。
博物館の学芸員・米倉秀紀さんによると、福岡市は全国的にも発掘調査が多い地域だそうです。それは、ビルなどを建設する際、予定地に遺跡があるかどうかをしっかりチェックする体制が敷かれているからで、年間50件以上の調査が行われているとのことです。
ミクロの世界から分かること
米倉さんが会場を案内してくれました。
まず、トイレの跡から出てきた糞塊や植物の種です。昔の人が食べていたものが分かります。見つかった種は瓜などのもので、周辺の土をよく調べると寄生虫の卵も確認されたそうです。
土といえば、水分の多い土壌には大昔の花粉が残っていることがあり、それを調べれば昔の植生が分かります。例えば、1万2000年前の層から見つかった花粉は現在の日本の平地より寒い気候で育つ植物のものでしたが、2000年前になると今と同じ常緑広葉樹の花粉が確認されています。このことから、1万2000年前は今より寒冷で、2000年前は現在と同じような気候だったことがうかがえます。
続いて、「抜け殻のある土器」です。土器を作るために粘土をこねる際、植物や昆虫が混じり、焼成時にそれらが燃えて空洞になるそう。展示されている土器にはコクゾウムシの痕跡があり、これは歴史的な発見でした。土器は縄文時代晩期のものですが、コクゾウムシが好むイネやソバなどの栽培がその頃には行われていたことになります。農耕は弥生時代に始まったとする通説を覆すものでした。
このほか、糸が巻かれた形跡がある古墳時代後期の鉄剣の柄、絹の布に巻かれていたことが分かる弥生時代の銅戈、使用した傷が残る黒曜石など、見応えのあるものばかりでした。
発掘後も発見がある
昨年まで博物館の学芸課長を務めていたという米倉さんに考古学の魅力を聞きました。
――考古学上で福岡の特徴は?
出土品に大陸からのものが多いことです。全国一と言ってもいいと思います。例えば、舞鶴公園の鴻臚館跡は交易の拠点だったところですが、中国・朝鮮の陶磁器だけでなく、ペルシャのガラス製品の欠片なども見つかっています。
――考古学の魅力はなんでしょうか。
当たり前だと思われるかもしれませんが、「発見」でしょうか。発掘時の「○○が見つかりました」というニュースが注目されがちですが、何げない出土品でも時間をかけて調べると、歴史的な発見があったりします。顕微鏡を使ってミクロの視点から調べることもそうですが、切り口は研究者によって違います。もちろん、遺跡が見つかったときもうれしいですが、その後の調査でも発見があるとうれしいです。
イベント名 | ふくおか発掘図鑑10~ミクロの考古学~ |
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開催日 | 2019年10月29日(火)~2020年1月19日(日) |
開催場所 | 福岡市博物館(福岡市早良区百道浜3-1-1) |
開催時間 | 9:30~17:30(入館は17:00まで) |
料金 | 大人:200円 高校・大学生:150円 中学生以下:無料 |
公式サイト | http://museum.city.fukuoka.jp/exhibition/544/ |