どれにしようか「まよい焼き」 柳川市民のソウルフードが復活
記事 INDEX
- キッチンカーで14種類を
- 思い出の味を守りたくて
- 地元のグルメを広めたい
定番のあんこのほか、ピザやキムチにウインナー……。種類が多くて選ぶのに迷ってしまう回転焼き「まよい焼き」は、福岡県柳川市で30年以上にわたって親しまれてきたソウルフードです。発祥の店は営業を終えましたが、市内の古民家カフェが製法を引き継いで、「市民の味」を復活させました。長く愛される魅力を取材しました。
キッチンカーで14種類を
「たくさんの種類があって、好きな味を選べるのが魅力です」。味を受け継いだ石橋隆也さん(37)が生地を焼きながら答えてくれました。
まよい焼きは、石橋さんが営む古民家カフェ「tanabata(たなばた)」のそばに止めたキッチンカーで焼いています。のれんや焼き台は、味と一緒に”先代”から引き継いだものです。
1個140~200円。メニューは白あんや黒あん、チョコ、クリームといったスイーツ系、ピザやチリポテト、キムチやバーガーなど総菜系の計14種類です。営業を始めて4か月あまり、1日に150~200個が売れるようになったといいます。
思い出の味を守りたくて
まよい焼きは1988年から、同市辻町の回転焼きの店「まよい焼き でんちゃん」で提供されていました。販売当初は7種類の味だったそうですが、店に通う地元高校生らの意見を取り入れていくうちにメニューが増えていったといいます。
店は、女将(おかみ)の高﨑貴美代さん(79)が長年切り盛りしていたものの、体調が優れず高齢でもあることから、昨年6月で惜しまれつつ営業を終えました。
常連客からは「やめないでほしい」との声が寄せられていたそうで、高﨑さんは「まよい焼きだけでも何とか残せないか」と考えていたといいます。
そこで名乗りを上げたのが石橋さんでした。自身も子どもの頃はでんちゃんの常連で、「慣れ親しんだ思い出の味がなくなるのは寂しかった」と話します。
高﨑さんがまよい焼きの担い手を探していることを知った石橋さんは、「福岡県事業承継・引継ぎ支援センター」などを介して、引き合わせてもらいました。
昨年9月に修業を始めた石橋さん。「焦げないようにふっくら焼く。火加減に注意です」と話し、受け継いだ銅製の焼き台を前に真剣な表情で生地を焼いていきます。
できたてのまよい焼きは、外側はさくっと、中はふんわり。時間がたつと、しっとりとした食感に。「生地がぷるぷるして、これもまたおいしい」と石橋さん。
地元のグルメを広めたい
カフェは市内に張り巡らされた掘割を舟で巡る「川下り」のコース沿いに位置し、近くには日吉神社があります。地元住民や参拝者が懐かしい味を求めて訪れ、石橋さんは「正月の三が日は大忙しでした」と振り返ります。
まよい焼きを口にした客からは「復活してよかった」といった声が寄せられているそうです。高﨑さんは「私の思いも受け継いでもらえた」と温かく見守っています。
石橋さんは、キッチンカーで柳川市外に出向いて販売できないかと考えています。「柳川の人なら、知らない人はいない味。市外の人にも、この味を知ってほしい」
古民家カフェ「tanabata」
所在地:福岡県柳川市坂本町4-2
営業時間:10:00~18:00
電話:070‐8446‐8891
※まよい焼きはカフェの営業時間に販売