日本一有名な家族に会える! 福岡市早良区の「サザエさん通り」
記事 INDEX
- 5月下旬は記念ウィーク
- 至る場所で楽しい発見!
- 長谷川姉妹が歩いた海岸
漫画「サザエさん」の原作者、長谷川町子さん(1920~92年)ゆかりの地、福岡市早良区の西新地区。戦争が激化した1944年、長谷川さんはこの地に疎開し、松林の残る海岸を散歩しながら作品の登場人物を思いついたと言われる。
5月下旬は記念ウィーク
作品中の一家が暮らす東京都世田谷区に続き、福岡市にも「サザエさん通り」が誕生したのは2012年5月。毎年この時期の1週間、今年は5月22~28日を「サザエさん通りウィーク」と称し、一帯で様々なイベントが開催される。
新緑がまぶしい通りには、銅像が立っていたり、ベンチや案内板が置かれていたり――。通りを歩いていると、さまざまな表情のサザエさん一家に出会え、ほっこりした気持ちにさせてくれる。すがすがしい気候にも誘われ、国民的キャラクターが生まれた背景を肌で感じながら、カメラを手に散歩してみた。
サザエさん通りは、福岡市地下鉄・西新駅そばの脇山口交差点から、シーサイドももち海浜公園までの約1.6キロだ。
「サザエさん通り」を生かしたまちづくり推進協議会の前会長、大杉晋介さん(65)によると、通りができる前は「住人でさえ、ここがサザエさんが生み出された地であることを知らない人が多かった」という。
「サザエさんは地域の宝。福岡とのつながりを多くの人に知ってほしい」。通りに名前を付ける機運が地元で高まり、著作権を管理する長谷川町子美術館などの理解を得て11年前、サザエさん通りが誕生した。
至る場所で楽しい発見!
始点となる脇山口交差点の東には、西新中央商店街がある。サザエさんやカツオくんらを描いた連続旗が買い物客の頭上で揺れ、”発祥の地”の誇りを感じさせる。
通りを北に向かうと、左手に西南学院大のキャンパスが広がっている。行き交う学生たちの傍らで、ひそひそ話をしているのは、長谷川さんとサザエさんの銅像だ。長谷川さんのエッセーコミック「サザエさんうちあけ話」の表紙をもとに造られ、長谷川さんがモデルになった初めての銅像だという。
銅像の高さは約1.4メートル。「この前の漫画、面白かったって評判みたいよ」。2人のそんなやりとりが聞こえてきそうだ。
さらに通りの中ほどまで進むと、「サザエさん発案の地」の碑がある磯野広場が目に入る。「サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんの銅像」は、長谷川さんの生誕100年を記念して建てられた。
カラフルな3人のシルエットをあしらったベンチもそばにあり、ちょっと一休み。コタツならぬベンチの下では、猫のタマが丸くなっている。「隠れキャラのように、現地を訪ねた人に小さな驚きを感じてほしい」(市の担当者)と、遊び心で制作されたそうだ。ちょっとした宝物を見つけたようで、なんだか楽しい。
長谷川姉妹が歩いた海岸
進路を西に変えたあと、福岡市博物館前の交差点を北に渡ると、福岡タワーがすぐ前にそびえている。通り沿いには、案内板やサザエさんのシルエット像があり、あと少し足を進めると終点のシーサイドももち海浜公園だ。
左手には市総合図書館がある。ここではウィークに合わせ、サザエさん一家が生活する昭和の時代背景を知ることができる企画展示を5月30日まで行っている。
また福岡タワーでは26~28日の3日間限定で、サザエさんの顔をモチーフにしたイルミネーションを午後7時30分~11時に点灯する。
このほか、28日には「サザエさんぽまち歩き」と銘打ったイベントが開かれる。市観光ボランティアガイドが、当時の街並みやエピソードを紹介しながら案内するもので、人気が高くすでに定員に達したそうだ。
かつて長谷川さんが病弱な妹と散策しながら構想を練ったとされる浜辺は埋め立てられた。マンションや商業施設が立ち並ぶ今、往時の面影を見つけるのは難しい。
サザエさん通りから少し西に歩いた樋井川沿いで、夏の海岸を活写した古い写真のプレートを見つけた。「この浜辺を長谷川さんは歩いていたのかも……」
1970年代の自身の記憶がふとよみがえる。当時住んでいた佐賀県鳥栖市から、埋め立てられる前の百道へ、父親に連れられて海水浴に訪れた。
古い写真を前にして、自らの遠い記憶と、長谷川さんたちが歩いている情景を重ね合わせた。時代の違いを飛び越え、「もしもこの海岸で長谷川姉妹とすれ違っていたら――」と空想を膨らませる。そんなひとときも楽しかった。