JR中間駅近くに並ぶ謎の石造物 モアイ像に込められた地域の願い
モアイ像、スフィンクス、パルテノン神殿の柱……。福岡県中間市のJR中間駅近くに、歴史的な石造物のレプリカが並ぶ場所があります。「屋根のない博物館」と名付けられた公園で、市民たちの憩いの場になっています。しかし、なぜ中間市にこのような施設があるのでしょうか。理由を探りました。
気分は世界旅行?
「屋根のない博物館」は、JR中間駅を出て南に向かうと1分ほどで到着します。車道と住宅地に挟まれた細長い土地を、歩道を兼ねた公園として整備したようです。
公園は、日本を含むアジアの石像を紹介する「ふるさとの道」、ヨーロッパやアフリカのものを集めた「やすらぎの道」、アメリカなどの「古代への道」、オセアニアの「もやいの道」の四つのゾーンで構成されています。
誰もが知る有名な像から、日本では馴染みが薄い壁画のレプリカまで、様々なものが並んでいます。展示物には解説パネルがついており、いつ頃に作られ、どこの国にあり、どんな由来のものなのか――を知ることができます。
歩きながらじっくり見て30分ほどです。駐車場はないので、ご注意ください。
「もやい」をめざして整備
この「屋根のない博物館」は、中間市が整備し、管理している施設です。所管している市建設課に経緯を聞きました。
担当者によると、幅7メートル、長さ434メートルの「博物館」は、旧国鉄香月線の軌道跡なのだそうです。なぜ土地が細長いのか、合点がいきました。
整備されたのは1989年。市政30年事業の一環でもあったそうです。
それにしても、なぜ石造物のレプリカなのでしょうか。謎を解くキーワードは「もやい」でした。
この地域の方言で「もやい」は<助け合い>や<共有>といった意味合いがあるそうです。こんな共助のコミュニティーをめざして、まず「モアイ像」を作ることが決まり、話が発展して「博物館」が生まれたということでした。
公園が面している道路は「もやい通り」と名付けられています。
取材をしている最中も、ランニングをしている男性、犬の散歩をする女性、三輪車で遊ぶ子どもを見守る保護者たちを見かけました。この公園は「もやい」を育む、市民の憩いの場になっているようですね。