猫の島を歩く プロカメラマンに同行して福岡・相島へ【前編・撮影に挑戦】
記事 INDEX
- 猫がのんびりと暮らす島
- マナーを守って気持ちよく
- 上手に撮影するコツは?
「猫の島」として知られる福岡県新宮町の相島。テレビやSNSで取り上げられて注目を浴び、猫好きたちの「聖地」となっています。その相島に通い、猫の姿を追い続けているプロカメラマンがいると聞き、撮影に同行させてもらいました。猫を撮るコツを教わりながら、私もシャッターを切りました。
玄界灘に浮かぶ人口約250人の島
新宮町の沖合7.5キロ、玄界灘に浮かぶ外周約6キロの相島にはおよそ250人が暮らしています。港の周辺には野良猫や放し飼いの猫が多く、のどかな島の景色が多くの猫好きの心をつかんでいます。
福岡市のJR博多駅から電車とバス、町営渡船を乗り継いで1時間ほど。福岡市内から日帰り圏内ということもあり、行楽シーズンには渡船の臨時便が出ることもあるそうです。
猫にストレスを与えないように
撮影に同行させてくれたのは、猫写真家の森永健一さん。福岡市を拠点に活動する森永さんは、猫を撮って20年以上のベテランです。月に1度は相島へ向かうとのことです。
撮影に入る前に注意点を聞きました。①走らない②大声を出さない③追いかけ回さない――ことが鉄則だそうです。
「猫にとって人間は大きいですから。僕らも、ゴジラが追いかけてきたら全力で逃げるでしょ?」
また、猫は急激な動きをするものが苦手で、近くで速く動くとすぐ逃げ出してしまうそうです。
島で生活する人たちへの気配りも忘れずに! 迷惑行為やマナー違反はご法度です。
「猫にも、島民にも、そして自分にも、互いにストレスをためないことが大切です」と森永さんは言います。
いよいよ撮影開始!
心構えを聞いたあと、撮影の時間が始まります。私が使用するのはニコンの「D5300」という一眼レフカメラの入門機です。6年ほど愛用しています。
撮影開始は午後2時頃。周囲を見渡すと、昼寝をしている猫が目立ちます。苦労せずカメラに収められそうで、寝顔もとてもかわいいです。
網の上やトラックの荷台など、様々な場所で猫はくつろいでいます。驚かさないように、少し離れた所でシャッターを押します。
しかし撮っているうち、猫と触れ合いたいという気持ちもわいてきます。そんなとき、森永さんから耳よりな情報が。「歩いている猫の前に指を出すと、寄ってきますよ」。そう言って森永さんが人さし指を出すと…
本当に猫が近づいてきます! 別の猫の鼻先だと思い、寄ってくる習性があるようです。
その習性から生まれるシャッターチャンスがあるといいます。「猫と猫が出会うと、あいさつがわりにおしりに顔をつけたり、鼻と鼻をくっつけたりします。その瞬間は、猫がキスをしているように見えます」
猫が2匹以上いるときは「何かおもしろいことが起こるかも」と期待できるそうです。アドバイス通りに観察していると、2匹が鼻をくっつけている様子が私にも撮れました。猫に合わせてレンズの目線を低くすることも大切なのだそうです。
良いシーンに出会うには…
森永さんは、相島に来ると一日中歩き回るそう。この日も、海岸沿いに港の周辺を行ったり来たり。それにも理由があります。「1匹の猫をじっと狙っていても、寝ていると動きはありません。歩き回った方が良いシーンに出会える確率は上がります」と話します。歩きながら一匹一匹の様子を確認し、時間を置いて、寝相や座っている位置に変化がないかを観察しているといいます。
撮影時に気を配っている点も教えてくれました。ハッとさせられたのは、「猫の逃げ道をつくる」という一言。猫が車道の側に飛び出すと事故に遭うかもしれません。「もし猫が逃げても車道側に行かないような角度から撮影するよう心がけています」とのことです。森永さんのアドバイスを受けながら、この日は400枚近くを撮影しました。
私が撮った写真を森永さんに見てもらいました。
「よく撮れています。ただ、全体的に猫が中心に来てますね。ちょっと工夫して風景や余白を意識して撮ると、島に溶け込んだ様子を捉えたプロっぽい写真になりますよ」
なるほど。今まで構図をあまり意識してこなかったので、非常に勉強になります。
風景写真が好きな私ですが、被写体がどう動くか分からないワクワク感や、かわいらしいしぐさから、動物写真もおもしろいと思いました。愛らしい猫たちに出会えて、大満足の一日でした。
関連記事:猫の島を歩く プロカメラマンに同行して福岡・相島へ【後編・インタビュー】