猫の島を歩く プロカメラマンに同行して福岡・相島へ【後編・インタビュー】
記事 INDEX
- 気づいたら「猫写真家」に
- 自分にできるのは撮ることだけ
- 初めての個展を福岡市で開催
福岡市を拠点に活動する猫写真家の森永健一さんは、相島(福岡県新宮町)のほか九州各地の島で猫を撮影しています。ブライダル写真を手がける傍ら、写真講座の講師なども引き受けて活動の幅を広げ、今年1月下旬からは自身初となる個展を福岡市内で開いています。猫を撮って20年以上という森永さんは、ファインダー越しの猫に何を感じ、何を思いながらシャッターを切っているのでしょうか。話を聞きました。
森永さんの個展は終了しました
森永健一さん
カメラマン歴20年以上。ヨーロッパや東南アジアなど22か国の200か所以上を訪れ、旅や猫のエッセーを執筆した。10年ほど前から、福岡市を拠点に相島や湯島(熊本県上天草市)などで猫を撮影している。猫写真教室の講師やブライダルカメラマンも務める。Twitter(@photomoriken)とInstagram(@morikencatphoto)でも写真をアップしている。
きっかけはヨーロッパ旅行
――カメラマンになったきっかけは?
アルバイトのスポーツカメラマンから始めました。小学校から大学まで様々なスポーツの大会で写真を撮りました。「写真っていいな」と思うようになり、この道に本格的に入りました。
――なぜ猫を撮影し始めたのですか?
ヨーロッパ旅行をしていたとき、イタリアのベネチアで猫を撮ったのが始まりです。ちょうど実家でも猫を飼い始めたタイミングで、目がそっちに向いたんでしょうね。「こんな所に猫がいた」と、いろんな人に言いたくて撮影していました。その頃はもうカメラマンだったので、気軽にではなく、力を入れて撮りましたよ。
――「猫写真家」というのはいつ頃から意識したのですか?
実は"ここ"というポイントはなく、気づいたら猫写真家になっていたという感覚です。旅も好きなので、その体験談を猫の写真と一緒に出版社に持ち込んだんです。そうすると「フォトエッセーを書かないか」ということになり、旅の様子を紹介する文章に猫の写真を添えるという構成の連載をさせてもらいました。そうやって猫の写真を撮るうち、いつのまにか猫写真家になっていました。
――猫のどういう写真を撮っていたのですか?
今はどちらかというと猫の自然な姿やかわいい様子を撮っていますが、当時は精悍な様子の猫を撮影していました。連載を始めて少ししてから、写真のバリエーションを意識して、かわいいしぐさも撮るように心がけました。
せめて写真に残してあげたい
――10年ほど前に福岡に拠点を移したと聞きました。
自分は旅行の中でも、離島に行くのが好きなんです。九州は離島が多いですから、そういう場所へのアクセスも良く、都会でいろんなものがコンパクトに集まっている福岡市がいいなと思い、こちらに来ました。
――相島に通うようになって作品に変化はありましたか?
相島もそうなのですが、日本の離島の猫は警戒心があまりないと感じます。あおむけになっている猫も、ずっとダラダラしている猫もいる。身の危険が都会ほど多くないからでしょうね。そんな様子が面白いと思い、そこに暮らす猫の自然な姿にフォーカスした写真を撮り始めました。海外の猫はきりっとした雰囲気のような気がします。
――どういうことを考えて撮影していますか?
私は余白や背景にこだわります。島の日常に溶け込んでいる様子を表現するには、猫の周囲の状況も含めて1枚に収めないといけませんから。また、野良猫は飼い猫よりも寿命が短い。自然は厳しく、冬を越せない猫だっている。そんな子たちをせめて写真の中で残してあげたい。そう思いながら、撮っています。
――猫を撮影してきて気づいたことは?
猫はとても気位が高いと思います。寝るときも、新聞紙や板があれば地面よりもそちらの上で寝るし、高い場所で寝ていることも多い。また、日が当たる気持ちのいい場所を選んで昼寝をしている。別の理由によるのかもしれませんが、私はそれを「気位が高い」と感じます。
――森永さんにとって猫の魅力とは?
かわいいのはもちろんですが、ストレスがたまることがあっても、猫を見ているとそれがほぐれていく感覚になります。やっぱり、猫はいいですね。
初の個展も開催
森永さんの初めての個展「ネコの矜持~Proud of Cat~」は、福岡市中央区西中洲の旧福岡県公会堂貴賓館で2月24日(17日は休館)まで開催されています。
相島の日常に溶け込み、のんびりする猫の様子や躍動感ある姿、きれいな自然を背景にしたものなど17枚を展示しています。2月22日と23日には森永さんのトークショーも行われる予定で、撮影の楽しさや苦労などを聞くことができます。
猫の様々な表情を見ることができる機会です。愛猫家はもちろん、少しだけ猫に興味があるという人も、足を運んでみてはいかがでしょうか。
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