引っ越しできる柱のキズ 福岡・春日市の夫婦がのこしたい家族の記録と記憶

記事 INDEX

  • 東日本大震災をきっかけに移住
  • me-moriに刻む記録と記憶
  • 「親子の絆」事業やってます

 昔、ほとんどの家には柱があって、子どもの成長を記録するという役割を任されていた。しかし今、都会ではマンション暮らしが増え、戸建てからも昔ながらの柱は消えつつある。引っ越しシーズンの春。思い出の柱のキズを持ち運び、一緒に転居できるようにした夫婦が、福岡県春日市にいる。

東日本大震災をきっかけに春日へ移住

 筒井貴志さんと美由紀さん、そして息子2人は、東日本大震災をきっかけに春日市へ移り住んだ。夫婦は東京都内の会社に勤め、事業企画やデザインなどに携わっていたが、ゆかりのない福岡を新天地に選んだ。「出張で来たとき、よさそうに感じたから」(貴志さん)だそうだ。2013年に工房「Have Some Fun!」を設立した。

 住まいを移して間もなく、福岡県内の林業、木工業が苦境に立たされていることを知る。木造住宅の需要減が原因という。どうにかして福岡県産材の利用促進に貢献できないだろうか。2人の息子を見て思った。自分たちが子どもの頃は、成長の記録として親が自宅の柱にキズをつけてくれていたっけ。


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me-moriに刻む記録と記憶


me-moriを企画した筒井さん夫婦

 引っ越しできる柱のキズーー。商品名の「me-mori」は、身長計としての「目盛り」であり、想い出や記憶の「メモリー」でもある。そして、「私(me)と森(mori)」で、森を大切にしてほしいという願いも込めた。素材は主に九州産のヒノキを使い、無垢材にこだわった。

 国内外のデザイナー、クリエイターの手で約30種類のデザインが生まれた。身長計がフォトフレームを兼ねているものもある。子どもの背丈に合わせて写真を入れると、成長記録になるそうだ。そうして生まれたme-moriは「記録と記憶を刻むことで、家族のシンボルに育っていく」と2人は考えている。


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数十年後に気がつく価値観


me-moriの裏面はビー玉転がしに加工できる

 me-moriは裏面を「ビー玉転がし」に加工できる。「レコードの発想。身長計はA面、ビー玉転がしはB面」。レコード会社の勤務経験がある貴志さんらしい遊び心だ。それとは別に、薄くスライスした木材をロール状にして、コンパクトに収納できる「me-mori roll」も商品化した。

 東日本大震災を経て、貴志さんは家族の大切さを噛み締める。「今はとにかくスピードが求められる社会。誰もがすぐに結果や答えを求めたがる。私たちはその対極として、20年、30年後に気がつく価値観を大事にしたい」。だからこうも言う。「me-moriは手にとった皆さんが育てていく商品。購入したときは"未完成"なんです」


身長計を丸められる「me-mori roll」


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僕らの会社は「親子の絆」事業をやってます

 「ハブ・サム・ファンは何をしている会社なんですか?」。よく聞かれるが、いつも答えに困る。「最近は『親子の絆』事業をやってますと言うようにしています」。me-moriは外国人にも好評で、海外進出も視野に入れている。「滑り台があったりハンモックがあったりして、家族が楽しめる住宅のプロデュースもしてみたいですね」。今後も「親子の絆事業」が仕事の柱になりそうだ。



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