5桁の市外局番 福岡県内2か所に残る「09496」の謎を追った
記事 INDEX
- 飯塚市の一部と小竹町は今も5桁
- 費用がネックに? 真相は謎のまま
- 悲願の4桁 だけど5桁に愛着も・・・
全国に約390種類ある電話の市外局番。東京23区の「03」など大都市は2桁で、地方にいくほど3桁、4桁と増えていきます。5桁の番号は、小さな離島などでたまにみられるくらいに減りましたが、福岡県の筑豊地方にも5桁の地域が2か所あるのをご存じでしょうか。
こんなに長いの!?
「町外の人は『こんなに長いの?』とびっくりします」。福岡県小竹町の菓子店「ジャーマンベーカリー小竹店」社長の神田真理さんが、外壁に記された店の電話番号を指さしました。小竹町の市外局番は「09496」。看板商品のシュークリームのおいしさと同じくらい、市外局番の長さにも驚かれるそう。
「5桁の番号を信じてもらえず、何度も確認された」「書類のマス目が四つしかなく、数字が収まらない」……。ほかの住民からは苦労話が次々に出てきます。
もう1か所は、小竹町に隣接する飯塚市の頴田(かいた)地区です。飯塚市の市外局番は「0948」ですが、電話線が小竹町と同じ「収容局」に集められている頴田地区は「09496」なのです。市内通話でも相手が地区外なら市外局番が必要で、通話料も割高に。同地区の市職員、許斐(このみ)博史さんは「他の地域との壁を感じますよ」と漏らします。
取り残された6500世帯
固定電話の番号は「市外局番」「市内局番」「加入者番号」の10桁で構成されます。NTT東日本によると、市外局番は1960~70年代に行政区域などを基に割り振られました。当時は5桁の市外局番も多かったのですが、加入者の増加で市内局番を増やす必要に迫られ、全国的に4桁、3桁と短くなっていきました。
筑豊地方でも1980年代から5桁の市外局番が次々と4桁に移行しました。なのに、頴田地区と小竹町の計約6500世帯だけが5桁のまま取り残されたのです。
なぜなのでしょうか? 5桁を4桁にする際は、市外局番の最後の1桁を市内局番の最初の1桁に移すことが多いのですが、これだと頴田地区の市外局番は「0949」となり、飯塚市の「0948」と異なってしまいます。かといって、多くの住民が望む「0948」にするには回線変更などに多額の費用がかかるため、当時の電電公社側が同意しなかったのでは――。ある市職員はこう推測しますが、「当時の記録がなく、わかりません」とNTT西日本の担当者。真相は謎のままです。
2021年にも悲願の4桁へ!
そんな頴田地区と小竹町ですが、2021年にも市外局番が4桁になる見通しです。2019年3月に要望を受けた総務省が認めれば、頴田地区が「0948」、小竹町は「0949」になるといいます。
これには住民も大喜びのはず。そう思いながら許斐さんに話を聞くと、意外な答えが返ってきました。
「長年の夢だったけど、5桁じゃなくなると思うと寂しい。地元の自慢を失うような、少し複雑な気持ちですね」
<かつては6桁も>
かつては6桁の市外局番もあり、福岡県みやこ町の勝山地区は約20年前まで「093032」、豊津地区は「093033」だった。市内局番はなく、同じ地区なら加入者番号だけでつながった。その後、周辺の行橋市などとともに「0930」に統一され、市内局番も設けられた。しばらくは市内局番のダイヤルを忘れる住民が相次ぎ、町役場に「つながらない」といった相談が寄せられたという。