ニャンニャンニャン! 宮若市で「猫のひなめぐり」はじまる

愛くるしい表情の猫のひな人形

記事 INDEX

  • 追い出し猫のまち
  • 手作りの風物詩に
  • 楽しくまちを散策

 ニャンニャンニャン――。「猫の日」の2月22日から3月10日まで、福岡県宮若市で地元に伝わる「追い出し猫」のひな飾り展「猫のひなめぐり」が開かれる。開幕を目前にした2月中旬、イベントの準備が進む”追い出し猫のまち”を歩いた。

追い出し猫のまち


県道の交差点で、ギロリとにらみを利かせる追い出し猫


 「災いを退散させる」と伝わる縁起物の追い出し猫。ほうきを掲げて威嚇するような表情の裏側には、かわいらしいニッコリ笑顔が。不幸や災難を遠ざける一方で、福を招き寄せるために表裏二つの顔をもっている。

 地域と猫の縁は約400年前に遡る。昔から、水がおいしく、実り豊かな土地として知られた宮若市。西福寺という地元の寺に大きなネズミがすみ着き、和尚や村人を困らせていたが、和尚にかわいがられていた猫たちが、命がけで退治したそうな。


猫塚のあるバス停の待合所


 そんな言い伝えから生まれた追い出し猫。宮若市山口の西福寺の跡地には、大ネズミと戦った猫たちを弔う「猫塚」のほか、猫をモチーフにしたバス停や、地元の人たちが整備した「猫の細道」がある。林の木の根元には猫のオブジェがひっそりと置かれ、散策する人たちを楽しませてくれる。


木の根元に猫のオブジェ


 ひな祭りのイベントは、地元住民らでつくる「宮若追い出し猫振興会」などが主催し、今年で6回目を迎えた。若宮コミュニティセンター「ハートフル」をメイン会場に、若宮商工会館や「追い出し猫本舗」など計7か所で、桃の節句の衣装をまとった愛くるしい猫の置物を見ることができる。


猫の衣装は畳のへりなどを有効活用


 猫のひな人形は、高さ5センチから2メートルほどのものまで約150体を数える。この季節になると振興会スタッフの女性たちを中心に、猫の顔に丁寧に筆を入れたり、手作りの着物を着せたりする作業に追われる。「できるだけお金をかけないように」と、衣装には服の端切れや畳のへりなど手近な素材を使うそうだ。


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手作りの風物詩に

 地域の風物詩になった猫のひなめぐり。その最終準備が進められていた福丸商店街の一帯を歩くと、作品の仕上げに精を出す人に出会ったり、展示の用意が整った人形を見たりすることができた。


井上さん宅のリビングで、巨大パネルの制作が急ピッチで進んでいた


 主婦の井上綾子さん(54)は自宅リビングで、巨大な猫のパネルを急ピッチで制作していた。家事の合間などを使って2週間かけて作り上げるそうだ。若宮商工会館の窓に飾るもので、高さは2メートルを超える。「大きくて左右対称に描くのが難しいので、いつも定規で測りながら作業しています」と井上さんは笑顔を見せた。


ライトアップされた交流スペース


 まちなかで目につくのは、県道沿いにある高さ3.6メートルの巨大モニュメント。ようこそ、追い出し猫の街へ――と迎えてくれているように見える。交差点の向かいには、県の屋外広告景観賞も受賞した福丸バス停交流スペースがある。


福丸商店街入り口の展示スペース


 商店街入り口にある横町展示スペースには、地元の幼児たちが紙で作ったひな人形が飾られていた。商店街の中ほどにある追い出し猫本舗では、猫をデザインしたキーホルダーやタオル、せんべいなど約30種類を販売している。


絵付け体験では、色ペンを使ってオリジナルの猫を作る


 店内の小さな「猫神社」にはこの時期、受験の合格祈願に訪れる“参拝者“の姿も。ここでは、陶器で作った猫の置物に色ペンで絵付けする体験もできる。近年は中国や韓国、東南アジアから訪れる観光客にも好評だという。

楽しくまちを散策

 近くにある薬局の窓には、様々な猫の写真が飾られていた。猫が好きな店主が「かわいかったので思わず」、猫のカレンダーを切り取って並べたのだと教えてくれた。


猫好きな店主がいる薬局の入り口にはたくさんの猫の写真が


 日吉神社の鳥居の足元には、追い出し猫がまるで守り神のように鎮座している。ぶらぶらと歩くうち、目の前に次々と現れるオブジェの数々。思いもかけない拾い物を見つけたようで、なんだか得した気分になった。


日吉神社の鳥居のそばに鎮座する追い出し猫


 商店街を出て、福岡ひびき信用金庫の若宮支店に向かうと、鮮やかに着飾った大きな猫の内裏びなが下校途中の児童を見守っていた。


福岡ひびき信用金庫若宮支店の展示スペース


 主会場のハートフルに足を運ぶ。遠目では、見慣れたひな壇が置かれているように見えたが、近くに寄ると、それぞれ個性的な猫たちが並んでいた。


ハートフルの会場に並ぶひな段


 近くに住む中学2年の女子生徒は「無愛想な表情のひな人形があって、家で飼っている猫にそっくりなので面白かった」と喜んでいた。


まちのあちこちで追い出し猫に出会える


 かわいらしく着飾った猫のひな人形が並ぶイベント――。「散策にちょうどいい」と、猫好きな女性や家族連れを中心にまち歩きを楽しむ姿が多く見られるそうだ。



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