猫の手も借りてコロナ退散 宮若に伝わる「追い出し猫」に願う
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新型コロナウイルスの影響が長期化する中、「災いを払う」とされる福岡県宮若市の「追い出し猫」が改めて注目され、「コロナ対策バージョン」もお目見えしました。コロナ収束に向け、「猫の手も借りたい」と思う人が増えているのでしょうか。
宮若の追い出し猫とは
2本足で立ち、手に竹ぼうき。ギロリとにらみをきかせた猫の裏面には、にっこり笑顔の猫がもう1匹。宮若市福丸の県道沿いには高さ3.6メートルのモニュメントが立ち、観光スポットの一つに数えられています。
追い出し猫の起源は、400年以上前にさかのぼります。ある寺に大きなネズミがすみ着き、近隣を荒らしていました。和尚が困り果てていたところ、寺の飼い猫が仲間を集めて大ネズミを退治し、住民は平穏な暮らしを取り戻した、とされます。
伝承をまちおこしにつなげようと、猫をモチーフにした素焼きの置物が25年ほど前から作られるように。かわいらしさが人気を呼び、観光に訪れる人も増えました。今では置物だけでなく、タオルやエコバッグ、せんべいなど約40種類のグッズがあるとのことです。
大ネズミを倒した猫を供養したと伝わる場所は「猫塚公園」として整備されています。最寄りのバス停の待合所は猫の形をしています。
コロナを追い出して!
昨年の夏頃から、モニュメント周辺で「コロナを追い出して」と願う人の姿も目立つようになったそう。「こんな形で注目されるとは思わなかった」と語るのは、「宮若追い出し猫振興会」の事務局長・安部勉さんです。
振興会の事務局がある「追い出し猫本舗」の店頭には、「コロナ退散猫」も登場しました。高さ12センチの猫は口元にマスクを着け、「コロナ退散」と書かれた小判を抱えています。
本舗の客足も持ち直し、来店者は前年を上回る勢いに。遠くは北海道から足を運ぶ人もおり、通信販売も好調だといいます。
伝承の猫の名前は・・・
伝承に登場する寺は、福岡県宗像市の「西福寺」といわれます。安土桃山時代に周辺の5軒の寺を統合してできたそうで、舞台はこの5軒のいずれかと考えられています。
本舗に並んでいる置物は「桜ちゃん」「黒ちゃん」「タマちゃん」などと名付けられていますが、伝承の猫には本来の名前があるそうです。
西福寺の千々和英博住職が教えてくれました。「仲間を集めた猫の名は『タキ』と語り継がれています。加勢に呼んだ猫の数は1000匹だったとも言われています」
伝承は口頭によるものですが、住職によると、詳しい地元住民から聞き取って書かれた戦後の新聞記事に「タキ」との記載があります。
400年以上の時を超え、追い出す相手は大ネズミからウイルスへ。「また人々の役に立てるかもしれないと、タキも喜んでいるのでは」と住職は話していました。