戦時の日常を考える 福岡市博物館で「戦争とわたしたちのくらし」展

国債購入を促す戦時中のポスター

記事 INDEX

  • 福岡大空襲に合わせて
  • 天井板で作った弁当箱
  • 戦時中のお金の話

 福岡市街地が焼け野原になった福岡大空襲から6月19日で75年となりました。福岡市博物館(福岡市早良区)では、戦争と平和について考える企画展「戦争とわたしたちのくらし」が始まりました。29回目の今年は「衣食住とお金」をテーマに、戦時中の人々の生活を紹介する様々な資料を8月10日まで展示しています。


advertisement

福岡中心部を襲った爆撃機

 1945年6月19日の福岡大空襲では、米軍の爆撃機B29が深夜から約2時間にわたって福岡市中心部に焼夷弾を投下し、博多の町や港、軍の拠点があった福岡城跡など被害は広範囲に及びました。1万2000戸以上が被災し、死者902人、行方不明者244人を数え、負傷者は1078人にのぼったとされます。


企画展を開催している福岡市博物館

 福岡市博物館は、多くの犠牲者が出た大空襲の日に合わせ、企画展を開催してきました。学芸員の野島義敬さんによると、終戦から数十年たって空襲の傷跡が明らかになった地域もあり、「実際の被害はさらに大きい」という見立てもあるそうです。


advertisement

資料約60点を展示

 会場では、「装いの変化」「食のあれこれ」「空襲と住まい」「戦時のお金事情」の分類で、約60点の資料を展示しています。


資料が並ぶ会場

 子どもが着ていたという半纏(はんてん)には、軍刀や戦車などの絵柄があしらわれています。日中戦争開戦(1937年)の直後に作られたもので、戦争に対する市民の高揚感が見て取れます。素材には綿が使われており、物資にまだ余裕があったこともうかがえます。


戦車などが描かれた子ども用の半纏


 天井板を利用して作った弁当箱も展示されています。米軍機が落とした焼夷弾などが天井板の上にとどまると消火が困難になり、火が燃え広がってしまうため、戦争後期には民家の天井板を外す動きが見られるようになりました。貴重なアルミ製の弁当箱はすでに軍に供出しているため、外した天井板を弁当箱の材料にしたといいます。


天井板を利用して作られた弁当箱


advertisement

戦費はどこから?

 膨らむ戦費をまかなうため、国民には国債購入が推奨されました。戦火の拡大に伴い、1941年には国民貯蓄組合法が制定され、貯蓄が義務づけられました。この法律により、一家の所得の75%が税金と貯蓄にまわったという試算もあるそうです。会場には、債券の購入や貯蓄を促す当時のポスターが展示されています。


展示している当時の債券

 硬貨に用いられる銅やアルミニウムといった素材も軍事物資に投入され、1944年には5銭紙幣が登場しました。


額面が5銭の紙幣

 会場を見て歩くと、戦況の悪化につれて苦しさを増していった生活事情が伝わってきます。野島さんは「実際に使われていた資料を見て、戦争の時代や平和について考えてほしい」と話しています。



イベント名 戦争とわたしたちのくらし29
開催日 2020年6月16日(火)~8月10日(月)
開催場所 福岡市博物館(福岡市早良区百道浜3-1-1)
開催時間 9:30~17:30
料金 大人:200円
高校・大学生:150円
中学生以下:無料
公式サイト 福岡市博物館公式サイト

advertisement

この記事をシェアする