インターハイはなくても夏の思い出を YAMAPが高校登山部の全国大会を企画

 登山用のアプリを提供する「YAMAP(ヤマップ)」(本社:福岡市博多区)が、登山部・山岳部に所属する高校生を対象に、それぞれの"山の楽しみ方"を自慢し合う全国大会を開催しています。新型コロナウイルスの影響で、今夏のインターハイは登山を含む全競技が中止になりましたが、「登山の未来を担う高校生たちの思い出に」とYAMAPの自然教育の担当者が発案し、実現しました。


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登山者に人気のアプリ

 YAMAPは電波の届かない山中でも現在地やルートが分かるスマートフォン向けアプリの開発・運営を行っています。2013年創業の新しい会社ですが、「福岡発」のIT企業として注目されています。

 アプリは事前にダウンロードした登山地図とGPSを使う仕組みで、地図は国内約2万1000座に対応。「活動日記」も付けられ、実際に歩いた時間や距離、高低差といったデータを記録できます。撮影した写真や感想などを添え、ほかのユーザーに公開することも可能です。登山愛好家に支持され、これまでに約200万ダウンロードを数える人気アプリです。



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高校生の登山記録を募集

 全国高校体育連盟(高体連)に加盟している登山系の部活は全国で626あります。今夏、インターハイの登山競技は群馬県で行われる予定でした。


大会に参加するために記録する「活動日記」の一例(提供:YAMAP)

 登山競技は通常、選手4人と監督1人でパーティーを組み、体力やアウトドアの知識・技術をほかのパーティーと競います。「YAMAP夏の全国大会」と銘打った今回の企画は、アプリで参加者の登山の記録を募集し、その内容を審査するものです。応募は9月30日までです。

YAMAP夏の全国大会の参加条件
①1チーム部員2人以上
②対象期間(2020年4月1日~9月30日)に登った山の活動日記を公開
③応募画面に入力する

 思い出の山に一緒に登ったり、3年生を送り出す「追いコン」を山頂で開いたり、登る山や日記の形式は自由です。担当者は「優勝校を一つ決めるというものではなく、それぞれの個性を評価したい」としており、「青春らしさ」「新しい発想」などを観点に、入賞校を選ぶとのことです。

 大会の趣旨に賛同したアウトドアメーカーなどが、リュックやテントといった賞品を寄せました。


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一つの区切りとして

 全国大会を発案したのは、YAMAPで専属ガイドと自然教育を担当している前田央輝さんです。登山イベントやガイド向け講習で講師を務めるなど1年の半分は野外で過ごすということですが、今年はほとんどの予定が延期・中止になり、自身の日常も新型コロナの影響を受けています。


企画を発案した前田さん

 アウトドアの楽しさを伝えられない"もどかしさ"が募る中、「夏の甲子園」が中止になるというニュースが飛び込んできました。かつて高校球児だった前田さんは、今の高校生たちの無念を思い、泣きたい気持ちになったといいます。「アウトドアに携わる今の自分が救うべきは、登山部の生徒たちだ」と考え、大会の構想が広がっていったそうです。


YAMAPは様々なアウトドア系の事業も行っている

 前田さんは自身の経験から、「次に進むためには、区切りが必要」と力を込めます。高校時代は勉強そっちのけで野球に打ち込みましたが、最後の県大会を終えて気持ちの整理がつくと受験勉強に集中でき、テストの順位もみるみる上がったそう。「目標が急になくなると、心に穴が開いたようになる。インターハイはなくても、せめて山を楽しんで、一つの区切りにしてほしい」と話します。

 提案はすぐに会社に受け入れられ、社外にも協賛の輪が広がりました。前田さんは「大人になったとき、振り返ってもらえるような良い思い出にしてほしい」と、参加を呼びかけています。


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