世界遺産・沖ノ島を7年にわたり撮影 写真集「神坐す」を出版

星空の作品を見せ「荘厳さを感じる取材だった」と振り返る山村さん

 上陸が厳しく制限されている世界文化遺産の沖ノ島(福岡県宗像市)を、所有する宗像大社(同)の許可を得て約7年間にわたり取材した写真家の山村善太郎さん(81)(神戸市)が写真集「神坐(いま)す」を小学館から出版した。山村さんは「自分の作品というより、誰かに背中を押されるように撮らせてもらった写真が多い」と収録作品を振り返る。

祭事遺跡や夜景を収録

 写真集には、磐座(いわくら)などの祭事遺跡や勾玉(まがたま)など国宝に指定されている遺物、祭礼、夜景などの作品を、カラーとモノクロで収めた。

 山村さんは世界遺産登録直前の2017年5月、磐座を特集した別の写真集の取材で初めて沖ノ島に入った。以降数回上陸し、助手と2人で昼夜を問わず、整備されていない山道を歩き、撮影ポイントを探した。「事前のリサーチができない取材だった反面、計算外の喜びが多かった」と話す。


磐座を取り上げた「神坐す」の表紙


 星空を15秒間露光で撮ると、雲が羽ばたく鳥のように写っていたり、中央に一筋の流れ星を捉えていたり。「フォトグラファーは頭の中でおおよその写り具合が分かっているものだが、実際に撮れた写真は、そうしたものを超えていた」。取材では、風向など微妙な気象の変化を感じることが度々あり、「撮影対象の全てに荘厳さを感じ、自然とこうべを垂れていた」という。


「目に見えない本質を」

 山村さんは、リアリズムを追求した写真家・土門拳(1909~90年)の薫陶を受けた写真家の西川孟(1925~2012年)に師事。1980年代からパリを拠点に活動し、95年にフランス政府から芸術文化勲章「シュバリエ」を授与された。2010年頃から磐座や神木など日本の自然崇拝をテーマとし、拠点を日本に移している。

 写真の魅力について「先入観やイメージにとらわれない大切さを、被写体から教わっている」とし、今後も「目に見えない本質を追い続けたい」と語る。

 A4判、112ページ。3300円(税込み)。


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