春日市ふるさと納税に回復の兆し 寄付額や返礼品の見直しで

ロピアの店舗で加工された肉とピザ
福岡県春日市は6年連続で、ふるさと納税の寄付額が減少している。苦戦を強いられる中、寄付額引き下げや新たな返礼品の導入などの手を打ち、回復の兆しも見えつつある。
西日本で唯一、6年連続減少
春日市によると、2016年度、県内3位の6億9500万円を受け入れた。18年度は、これまでで最多の12億5000万円に上った。
しかし、地場産品基準の見直しによって人気だった返礼品を出せなくなり、翌19年度は7億900万円に急落した。大規模な工場がほとんどない住宅都市で、減少に歯止めがかからず、24年度はピーク時から8割減の2億6800万円まで落ち込んだ。市が国のデータを基に確認したところ、令和以降に6年連続で寄付額が減少したのは西日本では春日市だけだったという。
25年度、市民税として市に入るはずでありながら、市民がふるさと納税を利用したことで市外へ流出した額は4億2700万円に上る。地方交付税で補填(ほてん)される75%を除いた1億600万円余りが市の収入減になる。
失われた財源やふるさと納税受け入れの経費分を補うには、寄付額を増やす必要がある。市は24年10月、約1000品目の返礼品のうち500品目の寄付額を変更。25年7月には、他の自治体との価格競争が激しいあまおうや辛子明太子、もつ鍋など主力商品の寄付額を再度見直した。1000~4500円の引き下げになり、7月の寄付額は前年同月の174%、8月は407%まで伸びた。
魅力ある"お礼"を自主開拓
さらに、春日市内に2店舗ある食品スーパー「ロピア」に協力を依頼。ロピアを展開するOICグループ(川崎市)は「地域を元気にし、ロピアの商品を知ってもらえる機会にもなる。地域経済を活性化するモデルケースを目指す」として、全国の店舗で初めてふるさと納税への参入を決めた。
市内の店舗で加工した牛タンやプルコギ、ピザなど6品が10月から市の返礼品に加わった。仲介サイトのポイント還元サービスが9月で終わり、10月以降の寄付控えも予想される中、市は「会心の一撃になる」と期待する。
8月からは、飼い主がいないネコの不妊・去勢手術を目的としたふるさと納税寄付を募ったところ、返礼品がないにもかかわらず、9月25日までに113件、31万6000円が寄せられた。お礼として、実際に市で暮らすネコの画像を載せた受領証明書とステッカーを寄付者に送る。
「返礼品ありきで、ネットショッピングのような状態」とも指摘される、ふるさと納税。市秘書広報課では「まちづくりに充てる貴重な財源の流出を、手をこまねいて見ているだけではいけない。魅力的な返礼品の開発と、本来の趣旨にのっとった取り組みの両方に力を入れていきたい」という。