中学校の吹奏楽部に新しい楽器を! 春日市が寄付を呼びかけ

劣化が進んだ楽器(春日市教委提供)

 福岡県春日市の中学校で、吹奏楽部が使う楽器の劣化が著しい。購入から30年以上が経過し、通常の使用が難しかったり、修理できず廃棄せざるを得なかったりするものが半数以上を占めるが、買い替えには多額の費用がかかる。ふるさと納税で広く寄付を呼びかけ、財源に充てる「中学校楽器購入プロジェクト」が12月に始まった。

半数以上が使用困難か不可

 市教委によると、旧春日町の中学校に初めて吹奏楽部が発足して2024年度で60年になった。この節目に、全6校の楽器の状態を把握することにした。

 24年12月から25年1月にかけ、扇弘行教育長と市教委職員が各校を訪問。中学校の音楽教諭として長く吹奏楽部の指導に携わってきた扇教育長自らが1点ずつ手に取り、劣化や破損の状況を確認、10段階で評価し、記録した。


吹奏楽部の練習を訪れ、楽器を手にする扇教育長


 全513点のうち、通常使用が可能なものは238点(46%)にとどまり、破損や老朽化で使用が難しいものは195点(38%)、廃棄が80点(16%)に上った。使い続けるために修理が必要なものは135点確認された。


 多くは30年以上使われ、半世紀近いバリトンサックスもあった。使用する生徒が毎年入れ替わるため、演奏の癖や扱い方の違いで耐用年数が短くなる傾向にあるほか、コンクールや演奏会、地域の行事で持ち運ぶ機会が多く、破損の可能性も高いという。

1口1000円で、ふるさと納税

 市教委の試算では、買い替えには1校あたり最大で3333万3060円が必要になる。しかし、教育予算は年々増加しており、楽器購入まで手が回らないのが実情だ。

 そこで市は12月、1口1000円で、ふるさと納税による寄付の呼びかけを始めた。返礼品はなく、春日市民も参加できる。

 春日南中吹奏楽部長の2年藤渡衣緒里さんは「コンクールで他校の楽器を見ると、傷やさびがなく、光沢がある。音の飛びも違うと感じる」と話す。顧問の加藤詩教諭も「吹きづらさや、修理しても改善しない状況に我慢しながら練習している。新しい楽器は、一段階難しい曲に挑戦したり、コンクールで好成績を目指したりするモチベーションにつながる」と期待する。


「皆さんの応援で新しい楽器に」(春日市教委提供)

 市教委では、寄せられた善意を各校に分配し、順次買い替えを進める方針。扇教育長は「皆さんの応援で購入できた楽器を手にすれば、生徒たちの地域に貢献しようという気持ちも強くなる」と語る。

 寄付は「楽天ふるさと納税」などのポータルサイトから申し込めるほか、市でも受け付ける。問い合わせは市秘書広報課(092-584-1111)へ。


advertisement

この記事をシェアする