復旧の動きが本格化 火事で臨時休館中の桂川町・王塚古墳館

臨時休館が続く王塚装飾古墳館

 4月に起きた火事のため臨時休館が続いている福岡県桂川町の王塚装飾古墳館について、町が復旧工事費を予算化し、再開に向けた動きを本格化させている。王塚古墳を紹介する展示物の追加も予定され、関係者は「皆さんに喜んでもらえる施設にしたい」と意気込んでいる。

<王塚古墳>
 6世紀前半に造られたとされる前方後円墳で、壁面に赤、黄、緑、黒、白、灰で盾や騎馬などの文様が描かれている。多数の馬具、武器、銅鏡などが出土しており、1952年に国の特別史跡に指定された。

2026年度中の再開を目指す

 火災は4月15日夜に発生し、事務室を焼いた。町によると、出火原因は特定されていないが、当時、館内に人はおらず、床下の配線周辺が激しく燃えていたという。

 王塚古墳は建物と離れていて延焼はなく、鏡や馬具などの主要な出土品は京都国立博物館(京都市)に寄託していて無事だった。石室のレプリカなどの展示品にも大きな被害はなかった。ただ、館内の電源や空調が使用不能となり、長期の休館を余儀なくされた。

 「国内で博物館や資料館が火事になったケースはほとんどなく、どのように復旧していけばよいか手探りだった」と学芸員の長安慧さんは明かす。燃えた事務室は窓がない場所に位置していたため、消火作業の際、煙を外に逃すのが難しかったという。再開後に同様の事態を繰り返さないため、館内のレイアウトの見直しから検討している。

 町議会は9月定例会で、復旧工事の経費約3億7500万円を含む一般会計補正予算案を可決。町は、2026年度中にも再開させたいとしている。

「ほんもの」の展示を追加

 新たな取り組みも進めている。これまで古墳館の展示はレプリカのみで出土品はなかったが、町で保管していたかけらから復元した円筒埴輪(はにわ)を公開する予定。高さ1メートルで、九州で出土した円筒埴輪としては最大級といい、長安さんは「本物を見ていただきたい」と話す。


再開後の展示が予定される円筒埴輪


 また、体験型の展示として、出土した 鎧(よろい) のレプリカを手作りし、来館者に実際に着てもらうことを計画している。


 古墳の石室に立ち入ることができる年2回の特別公開は、今年の春に続き秋も中止とした。古墳館が休館したままでは、受け入れ体制が十分ではないと判断した。長安さんは「臨時休館してから多くの問い合わせをいただき、改めて王塚古墳は全国に誇れるものだと感じた。もう少し時間はかかるが、再開に向けて準備を進めたい」と話している。


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