ナポリタンを焼きそば風に 市民のイチオシ「直方焼きスパ」
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記事 INDEX
- 商店街の喫茶店が発祥
- 定義を守り各店が特色
- 地域の力に支えられて
福岡県直方市が誇るご当地グルメ「直方焼きスパ」。見た目はナポリタンスパゲティとほぼ同じだけど、一体なにが違うの?関係者に話を聞きに現地を訪ねました。
商店街の喫茶店が発祥
市観光物産振興協会などによると、直方焼きスパはナポリタンを焼きそば風にしたメニュー。JR直方駅近くの商店街にかつてあった喫茶店「夕やけ」が、発祥の店とされています。「ナポリタンと焼きそばのいいとこどり」と言われ、白い皿にサラダと一緒に盛りつけて1980~90年代に提供していました。しかし喫茶店は90年代後半に閉店し、看板メニューも姿を消してしまいました。
復活のきっかけは2010年に訪れます。全国各地のB級グルメやご当地メニューが注目される中、直方市が市民に「直方の味」を募ったところ、「焼きスパ」を推す声が最多に。市などの呼びかけで、食生活改善推進会の会員らがレシピを再現しました。
復活したメニューは市内20以上の飲食店で提供されるようになります。有志によるボランティア団体「直方焼きスパ広め隊」が結成され、マスコットキャラクター「焼きスパマン」も誕生するなど、市を挙げてご当地の味を売り出しました。
定義を守り各店が特色
直方焼きスパには、①パスタ麺を使う②キャベツ、タマネギ、豚肉は必須③トマトケチャップベースのソースを使用④麺や具材を焼く――の四つの定義があります。各店はこの定義を守りながら、熱々の鉄板で提供したり、卵をトッピングしたり、それぞれ独自性を出して来店客をもてなしています。
直方市古町の商店街の一角で営業する喫茶店「カフェピコラ」。1年ほど前にレシピを教わった焼きスパをメニューに加えると、ナポリタンの注文は減っていき、その座を焼きスパが奪ったそうです。栄養バランスを考えて、旬の野菜をトッピングするカフェピコラの焼きスパは、月曜と土曜限定で提供しています。
店を切り盛りする本松陽子さん(75)は「食べた人に『昔の味に最も近い』と言われることがあります。できるだけレシピに忠実にソースをつくり、食で直方を盛り上げられたらうれしい」と話します。
直方市観光ポータルサイト「ココロミチル NOGATA」に掲載している直方焼きスパMAPでは、現在16店舗を紹介しています。
JR直方駅前にある「ご飯とパスタのお店 Bon」は、鋳鉄製の小型鍋「スキレット」で調理し、中央に生卵をのせています。辛さは2種類、唐辛子「あり」と「なし」のソースを選べます。
レンガ造りの銀行跡に店を構える「ギャラリー レストラン Buono(ボーノ)」では、フライパンで麺にしっかりと焼き目をつけ、食感にこだわっているそうです。熱々の鉄板に盛りつけ、麺の間にチーズを挟んで提供しています。
「画廊カンヴァス&めし屋」でも、金曜のランチタイムに10食限定で注文を受けています。セットで出てくるみそ汁にもよく合うと、来店客に驚かれるそうです。
地域の力に支えられて
直方焼きスパが地域を代表するグルメとして定着したのは、飲食店や住民らの支えがあったからこそです。ただ、レシピ復活から10年以上が経過した2021年、「直方焼きスパ広め隊」が会員の高齢化などを理由に解散しました。
焼きスパ文化の火を消すわけにはいかない――。新たに、地域団体「のおがたわくわく実行委員会」のメンバーらが立ち上がります。
「のおがたわくわく焼きスパ広め隊」として22年に活動を開始。イベントで使う大きな鉄板などを譲り受け、地元のイベントで焼きスパを販売したり、市内の高校で郷土の味を伝える出前授業を行ったりと奮闘しています。
のおがたわくわく焼きスパ広め隊の中野昭子隊長(64)は「まちづくりに食の名物は大事な要素。直方焼きスパをもっとアピールして市外からも人を集め、まちを元気にしていきたい」と語ります。