志賀島の名物といえば!海を眺めながら頬張る「金印ドッグ」
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記事 INDEX
- パンに”金印”を挟んだ!?
- 慕われた「へっぱく船長」
- 島が人でにぎわうように
福岡市東区の志賀島は、海水浴や魚釣り、史跡巡りなどができる人気のレジャースポットです。海の中道で結ばれた島を目指して車を走らせていると、道路わきに立つ「金印ドッグ」の看板が目に飛び込んできます。多くの人に愛されているホットドッグで、志賀島のドライブがさらに楽しく、思い出深いものになる”名物グルメ”です。
パンに”金印”を挟んだ!?
店の名前は「やすらぎ丸」。地元出身の先代オーナーが、志賀島で発見された国宝「漢委奴国王印」にちなんだ名物をつくろうと、40年以上前に創業しました。
金印ドッグは、コッペパンにキャベツを敷いて、サイコロステーキとイカのフリッターを挟み、特製ソースをかけて焼いたパンです。「味の決め手はソースです」と店長の佐々木丈さんが教えてくれました。
秘伝のソースはケチャップとマヨネーズをベースに、いくつかの調味料をブレンドして作ります。作り方はごく一部の限られた人しか知りません。食欲をそそる甘酸っぱい風味が特徴で、キャベツの上にたっぷりかけて、味を染み込ませます。
具材は、赤ワインで煮た一口サイズのサイコロステーキと、イカのフリッター。これを交互に四つずつ並べます。
なぜ具材がこの組み合わせになったのか、佐々木さんにも詳しいことは分からないそうです。「周りに海があるので、食べ応えのあるイカを入れて、ゴロゴロとしたステーキを金印に見立てたのでは」と話します。
キャベツにのせた具材の上から、再び「これでもか」というほどのソースをかけ、180度のオーブンで焼き上げて出来上がりです。
金印ドッグを考案した先代の高木新さんは、車でトレーラーを引きながら移動販売をしていたそうです。10年ほど前に亡くなってからは、長男がオーナーを引き継ぎ、佐々木さんらと店を守っています。「その日の気温によって焼き加減を変えるなどして、先代の味を再現しています」と佐々木さんは言います。
慕われた「へっぱく船長」
先代はどんな人でしたか――。佐々木さんに尋ねると「とにかくユーモアのある人でした」と返ってきました。
高木さんは「海が近いから」と船を模した店をつくり、“船外レストラン”と呼んでいたそうです。かつては海水浴場の近くで商売をしていましたが、数回の移転を経て、2024年春からは約40台分の駐車場を備えた現在地で営業しています。
店の敷地に置かれた船の形の建物は当時の名残です。現在はオブジェとして、ドライバーに新しい店舗の存在をアピールしています。
「本当に変わった人でしたね」と振り返る佐々木さん。気持ちよく遊びに来てほしいからと、店の前の県道に「やすらぎ街道」と”命名”し、店名も「やすらぎ丸」に。自らは「へっぱく船長」と名乗っていました。
へっぱくとは福岡の方言で「へりくつ」や「へんてこ」といった意味があります。佐々木さんは「みんなから船長と呼ばれて慕われていました」と懐かしみます。
「誰が言ったかこの道を やすらぎ街道と 私が言った」――。店の壁などには、船長の“へっぱく”な人柄を表す言葉が残っています。
島が人でにぎわうように
いろんな味を楽しんでもらおうと、店のメニューも充実しています。一番人気の金印ドッグ(税込み650円)をはじめ、ツナを使った「シーフード」(同)、ピリ辛チキンが入った「シカゴ」(税込み500円)、ウインナーを挟んだ「ポーク」(同)など、13種類を提供しています。
営業は昼11時から夜中の2時30分まで、年中無休です。「せっかく遠くから来てくれたのに、店が閉まっていたらガッカリさせてしまう」と、高木さんはよく言っていたそうです。夜は若い客が多く、駐車場がいっぱいになることもあります。
昼間は地元のお年寄りや、家族連れがやって来ます。若い日の思い出の味を求めて訪ねてくる客もおり、佐々木さんは「昔、デートで立ち寄ったという夫婦が、子どもや孫を連れて食べに来てくれることもありますよ」と笑顔を見せます。
店はテイクアウト専門です。購入した商品は、近くの砂浜や堤防などで、海を眺めながら頬張るのがおすすめです。
さっそく志賀島に渡り、車で5分ほどの金印公園でいただきました。
博多湾の光景とともに楽しむ金印ドッグは格別です。しっかり焼かれたパンの外側はカリカリ、中はソースが染みたキャベツがジューシーで、しっかりしたステーキ肉とイカの食べ応えに満足感が広がります。
佐々木さんは「先代は、志賀島にたくさんの人が集まってくれるようにとの思いを込めて店を出しました」と話します。「島が人でにぎわうように、また食べに来たいと思ってもらえるように、この味を大事にしていきたい」